(B)は回転寿司が挙げられるでしょう。「誰が握ったのかわからない、安い寿司なんて寿司じゃないだろう」という職人たちの思いとは裏腹に、「既存の寿司屋ほどの付加価値やクオリティは求めない」という消費者層がかなり多かったということが顕在化しました。
教授は、このタイプを「ローエンド型破壊的イノベーション」と呼んでいます。いまでも「回転寿司の寿司なんて…」と言いながら、閉店に追い込まれていく寿司店は少なくありません。その一方で、市場を奪うことによって規模の利点やさらなる技術革新によって低価格のままクオリティを上げていく回転寿司勢力が台頭してきているという構図です。
「急場凌ぎ」だったモノやサービスの質が急激に高まる
わたしは、コロナによる強制的なオンライン授業から解放された先生たちの声を聞いていると同じような破壊的イノベーションが近づいているのを強く感じます。「私たちのサービスはオンラインなどには代替できないものだ」という思いは理解できます。しかし、
「オンラインでも十分だな」
という気づきが生まれ、既存のサービスから離れる層が相当数出てきます。そして、そこからいつのまにか
「オンラインのクオリティが急激に高まる」
というフェーズがやってくるのです。
コロナによる急激な要求により、多くの「急場凌ぎ」とも言える対応が生まれました。コロナによる休業要請などが緩和された今、いろいろなところから「色々考えたけど、やっぱり元の状態が一番だよな」という声が聞こえます。しかし、「急場凌ぎ」の低い性能、つまりローエンド型の解決策がいつのまにか既存市場を破壊する可能性も大いにあります。既存プレイヤーが安心している足元で恐ろしいほどに静かに、無慈悲に進むのがこのローエンド型破壊的イノベーションの怖いところです。そして、破壊されるまで「状況を認めたくない」という思いも強いのが難しいところです。
「やっぱり実際に会ってなんぼだ」と考える営業マンは、「オンライン営業なんて」と考えてしまいがちですね。しかし、「オンラインで十分だ」という顧客層が生まれたこと、そしてそれは知らず知らずのうちに従来型の営業職市場を壊す可能性があるのです。
コロナによって生まれた「小さくて、稚拙なサービス」を忘れてはいけないのです。
【今日から使えるロジカルシンキング】は子供向けにロジカルシンキングのスキルを身につける講座やワークショップを開講する学習塾「ロジム」の塾長・苅野進さんがビジネスパーソンのみなさんにロジカルシンキングの基本を伝える連載です。アーカイブはこちら