ビジネストラブル撃退道

悩みを抱えた同僚、周囲はどう対応すべきか 職場でのメンタルケアを考える

中川淳一郎
中川淳一郎

 あとはオレがなんとかする

 自分がこうした気持ちを持てるようになったのも、実際に身近な人が自殺したから、というのはあるが、2人だけの組織を経営しているからだろう。誰かに文句を言っても仕方なく、仕事はとにかく終わらせなければいけないのだ。仮に弊社の従業員・Y嬢がうつ病になって仕事ができなくなったとしよう。

 その場合、彼女には「しょうがないよ。まぁ、治してくれ。取りあえず、まとめるのも大変だとは思うけど、今やっている仕事を全部教えて。そして関係者の連絡先をすべて教えて。あとはオレがなんとかしとくので」とだけ言うだろう。そこで、全関係者に連絡を取り、どのようにすれば良いかを聞く。

「なるほど、Y嬢がいないことは信義に反するので切りたい、と。はい、分かりました。ならば切ってください」

「私が代わりにやればいいのですね、分かりました。ちょっと慣れるまで時間かかるかもしれませんが、やりますね」

「彼女の復帰まで待って下さるとのこと、ありがとうございます。ご迷惑をおかけしますが、どうぞよろしくお願いします。私でできることもあると思いますのでいつでも連絡ください」

 まぁ、この3つのパターンになるだろう。2つ目の答えをした場合は、自分が労働時間を増やせばなんとかなるだろうし、誰か信用できるフリーランスを雇えばなんとかなる。

 きれいごとを言っているのではない

 それに、医療、インフラ、食べ物、警察・消防などの仕事以外は誰も死なないのだ。自分自身そういった仕事をしているだけに、仮に仕事でミスをしたら迷惑はかけるかもしれないが、誰も死なない。だから、仕事に穴を開けてしまったとしても、そこは謝るしかないし、それで切られるのも仕方がない。ただ、誰も死なない仕事なのに気に病んだ末に自殺してしまったら元も子もない。

 だからこそ、同僚で精神を病んだ人がいた場合はため息をついたり怒りを露わにするのではなく、「この人がいないでも仕事をまわせるように組織で対処しよう」と考えてほしいのである。そして、できれば「あの人が復帰した後もやさしく迎え入れて歓迎しよう」と考えてほしい。きれいごとを言ってるように聞こえるだろうが、人が死ぬとそういった気持ちになるものですよ。所詮、仕事なんて大事な人の命に比べればどうでもいいんですよ。

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう) ネットニュース編集者
PRプランナー
1973年東京都生まれ。1997年一橋大学商学部卒業後、博報堂入社。博報堂ではCC局(現PR戦略局)に配属され、企業のPR業務に携わる。2001年に退社後、雑誌ライター、「TVブロス」編集者などを経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『謝罪大国ニッポン』『バカざんまい』など多数。

【ビジネストラブル撃退道】は中川淳一郎さんが、職場の人間関係や取引先、出張時などあらゆるビジネスシーンで想定される様々なトラブルの正しい解決法を、ときにユーモアを交えながら伝授するコラムです。更新は原則第4水曜日。アーカイブはこちら

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