今日から使えるロジカルシンキング

コロナに完全勝利はない 日本人はもう朝令暮改を嫌ってはいられない

苅野進
苅野進

 第27回 リスクゼロよりオプションB

 論理的思考力・ロジカルシンキングと聞くと、「名探偵コナン」のように完璧な答えをスパッと出すことのできる技術と考える人が多いのですが、それは違います。わかっていることとわかっていないことを分ける。確実なこととそうではないことを分けるといった作業を通じて、「よりよい策はないか」を考えていくためのものです。

 実際に生きていると、どのような問題も完璧で理想的な解決策が存在することはほとんどありません。机上や空想上の理想を100点とすると、現実的には70点から80点くらいを目指すものです。「オプションB」とは日本語で言えば次善の策のことです。本連載の第2回では「分ける」ことの必要性を扱いました。今回は「コントロールできること」と「コントロールできないこと」を分ける重要性です。

 コロナ対応でゼロリスクに囚われ過ぎていないか

 現在の新型コロナウイルスに対する状況は、わたしたちの「ゼロリスク」への考えの違いが大きく感じられることになりました。「リスクはゼロでなければならない」という思い込みは「ゼロリスク症候群」ともいえるでしょう。

 《ゼロリスク症候群》

 ・「リスクがない」という状況がありえると考えている

 ・リスクがあるかぎり、利点を考えることはできない

 簡単に言えば、リスクと「共生」することができるかどうかという考え方です。みなさんも気づいていることでしょうが、新型コロナウイルスは収束はしても、そのリスクがゼロになることはないでしょう。インフルエンザで毎年多くの方が亡くなっているのを考えればわかることです。

 「消すことができないリスク」と「消すことができるリスク」を分けることができないと、非効率な行動になってしまったり、まったく動けなくなったりするのです。このことは、この20年でBSE(牛海綿状脳症、一般には狂牛病とも)やSARS(重症急性呼吸器症候群)など様々な新しいリスクが発生したときに表面化しました。

 リスクへの慢心が大きな事故を生む

 たとえば「不良品」をなくすための検品を考えてみましょう。理想は不良品ゼロです。そこを目指してダブルチェックをする。にもかかわらず不良品が発生する。ゼロを目指してトリプルチェックを導入する。こうなるといつまでたっても出荷できません。さらには、コストが嵩んできます。

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