「こんな日々でも、いつでも食や技術などについて研究しているよ。味と香りの組み合わせ具合とか。例えば、クリスマスに食べるパネットーネのようなイタリアの伝統的な菓子も、砂糖を減らす、あるいは全く使わないとかね。また、子どもと一緒にショートパスタをつくったりもするし(笑)」
そういえば、最近、中国から打診を受けていることがある。それは赤ん坊用の食品の開発だ。ベビーフードの安全性への関心が高いためだ。星付きシェフの食品が望まれる背景である。
一方、イタリア食品の輸出やイベントも含め、多くのプロジェクトが中断している。なかなか営業再開がはかれない飲食店は、これからも苦難の道が予想されている。特に店内で「社会的距離」を維持するとなると、今までのような席数を用意することは難しい。だからこそ、持ち帰りや宅配サービスの内容充実などやるべきことは多い。
ぼくもこの2カ月間、自宅だけで食事をしてきて、やはりたまに賑やかなレストランの雰囲気を懐かしく思う。だが、それ以上にプロが作った料理を食べたいとの願望が日に日に募る。舌が、身体が求めるのだ。
そう思っているとき、エロスと電話で話したのである。彼がこの異例の生活で深めたさまざまなアイデアが、夏以降、一気に爆発するはずだ。具体化されていく様子が目に見えるようだ。とても楽しみである。
【ミラノの創作系男子たち】はイタリア在住歴の長い安西洋之さんが、ミラノを拠点に活躍する世界各国のクリエイターの働き方や人生観を紹介する連載コラムです。更新は原則第2水曜日。アーカイブはこちらから。安西さんはSankeiBizで別のコラム【ローカリゼーションマップ】も連載中です。