オンラインで使われる語彙数は5分の1
オンラインで使われる語彙数の平均は8000語で、私たちが普段理解している語彙数の5分の1という研究もあります(※2)。微妙なニュアンスが伝わらない、想像以上に強く受け止められてしまうといったことも、対面で仕事をしているときに比べ起こりやすいと考えておいたほうがよいでしょう。
オンラインでのやりとりでショックや怒りを感じたときなどでも、このことを知っておくと、必要以上に感情的にならずに済むと思います。またセンシティブな内容を伝えるときには、この特性を思い出し、十分内容を吟味してから伝えるようにするとよいでしょう。
対面コミュニケーションとの違いを知っておく
すでにテレワークにシフトし、オンラインのコミュニケーションツールを駆使している方も多いでしょう。メール、電話、チャット、ビデオ会議など、代表的なツールの特性(メリット、デメリット)を改めて理解し、対面コミュニケーションとの違いをざっくりと掴んでおきましょう。
・メール
対面コミュニケーションと違って、表情やしぐさ、声のトーンなど、言語以外の情報が少なく、誤解が生じやすい。自分の都合の時間にメッセージを受け取ったり、送ったりすることができるが、タイムラグが生じてしまうというデメリットもある。急いでいない案件のとき、記録を残したい案件、口頭ではわかりにくい案件にも便利。
・チャット
メールと同様、言語以外の情報が少ないため、誤解が生じやすい。メールとは違い、ほぼタイムラグなくやりとりができるので、様々なシーンで利用できる。雑談に近いコミュニケーションにも向いている。
・電話
声のトーンや雰囲気といった情報は受け取れるが、表情やしぐさなどの情報がないので、対面コミュニケーションよりは誤解が生じやすい。突然、相手の時間に割り込んでしまうというデメリットもあるが、タイムラグなく確実に用件を伝えられるので急ぎのときに便利。記録を残したいときには他のツールと併用する。
・ビデオ会議
表情やしぐさ、声のトーンなどの言語以外の情報も伝えることができるが、対面ほどクリアではない。状況によっては声が聞こえにくい、視認性が悪いといったことも起こる。参加者が時間を合わせる必要があるが、タイムラグなくやりとりができる。資料を共有したり、チャットを併用したり、使い方の幅も広い。オンラインに慣れていない人は準備など心理的抵抗を感じるケースもある。
テレワークをするときには、これらの特性をおさえ、合ったものを選ぶと共に、対面コミュニケーションのときよりも誤解が生じやすいことを念頭に置く必要があります。「普段からメールや電話で伝えるときには気をつけている」という自覚がある人も、対面以外のコミュニケーションが中心となるテレワークでは思わぬミスをしてしまう恐れがあることを自覚しておきましょう。
テレワークは働き方の選択肢の一つとして定着していきそうです。つい技術的な面の習得ばかりに目が行きがちですが、オンラインコミュニケーションの特性とそれが人間の心理に与える影響も考慮すると、より快適な働き方ができると思います。
※1 Epley, N., & Kruger, J. (2005). What you type isn’t what they read: The perseverance
of stereotypes and expectancies over email. Journal of Experimental Social Psychology, 41, 414-422.
※2 荒牧英治, 増川佐知子, 森田瑞樹, 保田祥 2012.Japanese vocabulary for Online Communication is 8000 words. 情報処理学会研究報告 2012(3),NL-208,NO.9.
【最強のコミュニケーション術】は、コミュニケーション研究家の藤田尚弓さんが、様々なコミュニケーションの場面をテーマに、ビジネスシーンですぐに役立つ行動パターンや言い回しを心理学の理論も参考にしながらご紹介する連載コラムです。更新は原則毎月第1火曜日。アーカイブはこちら