セブン残業未払い 杜撰な労務管理に呆れる
コンビニエンスストア最大手のセブン-イレブン・ジャパンで働くアルバイトやパート従業員の残業代をめぐり、支払い計算の誤りで長年にわたって一部未払いが続いていたことが分かった。
本部に記録が残っているだけでも未払い対象者は3万人を超え、遅延損害金を含めた未払い額は5億円近くにのぼる。こうした未払いは創業当初から続いてきた可能性もあるという。あまりに杜撰(ずさん)な労務管理に呆(あき)れるばかりだ。
何より問題なのは、平成13年に労働基準監督署から支払い不備の指摘を受けたものの、未払い分を払わず、公表もしていなかったことである。これを受けて密(ひそ)かに給与計算を修正したが、その計算式も間違っていた。改善する機会を自ら放棄していたに等しい。
まずは記録がない元従業員を含めて未払い分の支払いに全力をあげる必要がある。
人手不足が深刻化する中で労務管理への疑念を招けば、人員の確保は一段と難しくなることを肝に銘じるべきだ。
同社では本部がフランチャイズ契約を結ぶ加盟店から、従業員の給与計算と口座振り込みの業務委託を受けている。だが、本部側がこの計算式を誤り、労働基準法に沿っていなかった。今年9月に一部加盟店が労基署から是正勧告を受けて未払いが発覚した。
本部に記録が残るこの7年9カ月で、1人あたりの未払い最高額は約280万円に達した。本部が未払い分を負担するが、記録が残っていない過去分の支払いがどこまで徹底されるかは不透明だ。専用の問い合わせ窓口を設けた同社には真摯(しんし)な対応を求めたい。
同社をめぐっては、24時間営業の継続で本部と加盟店が対立したほか、スマートフォン決済の不正利用でサービスを撤回するなどの不祥事が相次いでいる。今回、従業員に対するいいかげんな労務管理が続いていたことも発覚した。企業統治の機能不全は深刻だ。
こうした事態が続くようでは信頼度の低下は避けられまい。高収益企業として知られる同社だが、コンビニ業界の競争が激化する中で顧客離れも加速しよう。
記者会見した永松文彦社長は「大きく環境が変わる中でわれわれ自身が変わってこられなかったのが一番の問題」と陳謝した。企業体質をどのように改革するかが問われている。