働き方ラボ

日本人は「自由な服装」が苦手 あなたならどんな格好で出勤するか

常見陽平
常見陽平

 先日、ある通信社の記事で『リクルートスーツの社会史』(田中里尚 青土社)という本の書評を担当した。なぜ、就活生はリクルートスーツを着るのか? 膨大な史資料に向き合いつつ、その問いに立ち向かった労作だった。就活生の着るものが学生服から「背広」に移行した過程、女性の社会進出と服装の関係、なぜ黒になっていったのかなど、気になる点を丁寧にとらえていた。

 この本は、就活生だけでなく、日本のビジネスパーソンが何を着てきたかの貴重な記録でもある。そして、私たちも今、何を着て働くのかという問いと向き合い続けている。

 服装が自由ならすべて解決されるのか?

 毎年、就活シーズンになると、SNS上で盛り上がるのが新卒一括採用批判であり、リクルートスーツ批判である。特にリクルートスーツは「画一的だ」「みんな同じで気持ち悪い」などと批判される。ヘアカラーのメーカーなどによる、自由な髪の色で就活し、働こうなどというムーブメントも起きている。就活生に限らない話だが、今年の「ユーキャン新語・流行語大賞」にノミネートされた「#KuToo」もハイヒール着用に関する問題提起だった。

 就活生だけでなく、ビジネスパーソンにおいても服装を見直す動きはある。三井住友銀行やパナソニックなど、日本の大手企業でもジーンズ出社が可能な部署が広がりつつある。

 ここからが本題だ。服装を自由にしたら、すべては解決されるのか? これが私の問題意識だ。

 先に私の立場を主張させて頂こう。求職者や労働者の権利として自由な服装を要求するのは正しい。ただ、自由であることによる「残念な光景」について私たちは意識する必要がある。そう、日本人のビジネスパーソンは「自由な服」が大変に苦手なのだ。さらには、服装を自由にしたら、イノベーションが起こる、会社の風土が変わるなども幻想である、と。

 仕事柄、服装が自由な企業にお邪魔することがよくある。もともと服装が自由なベンチャー企業、中でもIT企業やウェブメディア企業、自由な服装が解禁された大企業などだ。その度に心の中で、こう思う。「この人たちも、大変だな」と。

 いかにも社長や社員が、新卒一括採用やリクルートスーツをディスっていそうなベンチャー企業の社員たちの服装を見ると、「自由」なようで画一化していて苦笑する。ジョブズやザッカーバーグを真似たコスプレ野郎や、全身ファストファッションの人などで逆に画一化していて絶句してしまう。無理して自由人を装っている人は痛いのである。

Recommend

Biz Plus

Ranking

アクセスランキング