デロイトトーマツベンチャーサポート(DTVS)です。当社はベンチャー企業の支援を中心に事業を展開しており、木曜日の朝7時から「Morning Pitch(モーニングピッチ)」というイベントを開催しています。毎週5社のベンチャーが大企業の新規事業担当者や投資家らを前にプレゼンテーションを行うことで、イノベーションの創出につなげるのがねらいです。残念ながら新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策のためフルリモート開催となっていましたが、7月から会場(東京・大手町)よりLIVE配信する形でのハイブリッド開催となっております。ご来場もしくはリモートでのご参加が可能です。
モーニングピッチでは毎回テーマを設定しており、それに沿ったベンチャーが登場します。ピッチで取り上げたテーマと登壇ベンチャーを紹介し、日本のイノベーションに資する情報を発信する本連載。今回は林業特集です。
人工林面積は世界で8番目
林業は非常に息の長い産業で、苗を植えてから木材にするまで50~60年という期間を要します。また、川上から川下に至るまで(1)供給能力の低さ(2)国産材に比べて多い輸入材(3)担い手不足(4)林業の低迷による災害の発生など外部不経済(5)山村の過疎化-といった課題を抱えてきました。
ただ、日本の林業にも新たな可能性は生まれてきています。世界で8番目に人工林面積が大きい国というのが、その理由です。上位の国は中国や米国、ロシア、カナダなど広大な面積の国ばかり。日本の供給のポテンシャルは決して低くありません。
また、国内の木材供給量は近年増加傾向にあります。総量自体も増えて自給率も高まってきています。
CLTの需要が拡大
こうした背景を踏まえ新たな動きも顕在化しており、近年はCLTという木材を縦と横に交互に重ねた大判のパネルが急激に伸びています。早く施工できて地震に強く、耐火性に秀でているといった特性を備えている点が人気の理由です。また、日本では不動産会社や建設会社が出資して会社を設立、製造から販売までのフローを統合し低コストでユーザーニーズに合致した高品質な商品を供給するという、新たなビジネスモデルも台頭しています。
さらにここ20年ほどは若手の従事者が増えてきており、新たな考え方や発想が生まれてきやすい環境が徐々に育まれてきているのではと思っています。地球温暖化対策の観点から見ても、温室効果ガスの排出量を実質的にゼロにするカーボンニュートラルの領域で、林業の役割は非常に大きいと考えています。
大幅な伸びを示す木造の公共建築物
木造建築物の人気も高まっています。「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」が施行された2010年は、低層の公共建築物の木造比率は17.9%でしたが、2019年は28.5%に拡大しました。ワーケーションと森林セラピーや子供の自然体験(エデュケーション)を組み合わせた、新たな価値も生まれてきています。
業界では新たな改革が進む中、多くのスタートアップが誕生しています。とくに国内では総合的な林業マネジメントや木材の活用・サービス、バイオマスといった分野に関わる企業が目立っており、今回は5社を紹介します。
地域木材で理想の暮らしを
VUILD(川崎市川崎区)は、地域の木材を活用し理想の暮らしを自分たちで作るため、安価で高性能なデジタル木材加工機「SHOPBOT」を全国75カ所に導入しています。SHOPBOTを拠点に提供しているサービスのひとつが、デジタル家づくりプラットフォームです。アプリ上で間取りを作ることによって自動的に設計データが立ち上がり、空間の大きさや窓の有無、性能や仕上げを設定することで金額が提示される仕組みです。