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超高齢化社会の課題山積 シニア・CareTechベンチャーが解決を促す

粂田将伸
粂田将伸

独居高齢者を遠隔地から見守り

 COVID-19によって外出機会が大幅に減少したことで、要介護度が悪化する高齢者の増加が懸念されています。身体機能の低下に加え、コミュニケーション不足に伴う認知機能の衰えが深刻化する恐れがあるからです。インフィック(東京都千代田区)が提供するのは、介護業が抱える課題を解決する「LASHIC(ラシク)」というサービスです。AIを搭載したクラウドアプリと室内センサーなどのデバイスを活用し、在宅の独居高齢者を遠隔地から見守ります。

ハイブリッド型清掃システム

 院内感染対策を徹底的に行うため、ビコー(埼玉県毛呂山町)が提供しているのは人とロボットによるハイブリッド清掃システムです。既存のロボットにカメラを搭載し、Wi-Fiなどによって制御する仕組みです。また、カメラの映像はオペレーターにも送られており、必要に応じて人の手も介在できるようにするなど、AIが誤認した際でも危険が生じないようにしています。オペレーター1人で清掃ロボット30台(最大100台)の運用が可能です。

身体介助以外で福祉に携わり

 プラスラボ(東京都港区)は、介護福祉に特化したスキルシェアサービス「スケッター」を提供しています。未経験者や資格のない方でも、高齢者の話し相手やレクリエーションの担当は可能という考えに基づき編み出した、身体介助以外で福祉に関わることができる体験型のシェアリングエコノミーです。ほぼ口コミに頼っていますが毎月100人程度のペースで働き手が増加しています。福祉事業者だけではなく地方自治体などとの連携も視野に入れています。

要介護者と介護士をマッチング

 LINK(東京都港区)は、「最も近くで在宅介護を支える存在」をテーマに、要介護者と介護士をマッチングする介護保険外のオーダーメイド介護サービス「イチロウ」を提供しています。介護の品質を担保するため介護士については、介護技術などのパーソナル情報が登録されており、サービス内容は通院の付き添いや自宅介護など。登録利用者数やアクティブ利用者の数などは、すべて右肩上がりで推移しています。

薬を使用しないがん治療法

 東京工業大学発ベンチャーのメディギア・インターナショナル(横浜市緑区)は、薬を使用しないがんの治療法の開発を進めています。活用するのは生分解性多糖類を原料とする吸水性ポリマーです。世界で初めてナノ微粒子化に成功したゲルを活用し、がん組織を囲って酸素や栄養素の供給を遮断、がん細胞を死滅させるメカニズムで、身体への負担感は大幅に軽減できます。また、治療を行う際の特別な手技も不要でコストも抑制できます。  

 超高齢化社会に突入しているにもかかわらず、シニア層が抱える課題を解決するサービスはまだまだ不足しています。シニア・CareTechベンチャーのさらなる台頭に期待が高まります。

日本証券アナリスト協会認定アナリスト、CFP(R)。証券会社、銀行でIPO、M&A、法人企画、PBに12年間従事した後、2016年デロイトトーマツベンチャーサポートに入社。起業からIPO・M&Aまで、企業のライフサイクルに応じハンズオンで携わる。スタートアップ専門のM&A事業を立ち上げ、IPO、M&A支援を統括。現在はM&Aアドバイザリーリーダー。

【Fromモーニングピッチ】では、ベンチャー企業の支援を中心に事業を展開するデロイト トーマツ ベンチャーサポート(DTVS)が開催するベンチャー企業のピッチイベント「Morning Pitch(モーニングピッチ)」が取り上げる注目のテーマから、日本のイノベーションに資する情報をお届けします。アーカイブはこちら

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