地方は新たなマーケット
大企業にとっても地方創生に関わる意義は大きくなってきます。これまではCSR(企業の社会的責任)や研究開発といった領域で関わる傾向が強くありましたが、これからは働き方改革という観点が重要になってくるでしょう。リモートワークやワーケーションなど場所を問わない働き方を提唱する必要があるからです。地域課題を解決するソリューションをスタートアップと協業して地域で実証し、新しい事業モデルを構築する動きも盛んになると考えております。
また、スーパーシティ法など政府による大規模な政策などを踏まえ、地方を新たなマーケットとしてとらえ、ビジネス基盤を整備することも求められています。今回は自立をテーマに、「集める」や「稼ぐ」といった領域で注目のスタートアップ5社を紹介します。
空き家を活用した多拠点生活
都市か地方ではなく「都市と地方に暮らす時代へ」をコンセプトに掲げ、空き家を有効活用した多拠点生活を提供するのがアドレス(東京都千代田区)です。月額4万円で全国どこでも住み放題を実現します。また、多拠点生活には移動手段が必要となるためANAと提携し、月額3万円で2往復できる仕組みを導入しています。JR東日本などとも提携しているほか、車移動についても協業できる企業を募集しています。
残額なしで有効利用できる電子チケット
電子チケット方式を用いた、支払いを肩代わりするキャッシュレス決済サービス「commoney(コモニー)」を提供するのがコモニー(福岡市博多区)です。電子チケットをプレゼントした場合、一定金額以上を利用しなければ残金が運営会社側に渡ってしまうことがありますが、このサービスでは実際の利用額だけが引き落とされます。ふるさと納税の返礼品としても活用できます。
食品製造のマッチング
キリンホールディングスの社内ベンチャーであるLeapsIn(リープスイン、東京都中野区)は食品製造のマッチングサービス事業を展開しており、食品を作りたいメーカーと空き稼働を解消したい工場を結び付けます。昨年だけで20の量産プロジェクトに携わりました。パートナーは、展示会などに足を運んで探していましたが、サービスを活用すればオンライン上で対応できるため、営業の効率性は大幅に向上します。
地域課題を解決する人的プラットフォーム
理想の地域社会の具現化を目指し、自治体や大企業との間でワーケーションや人材開発などの協業を実施しているのがNext Commons Lab(東京都渋谷区)です。自治体からの委託を受けた上で専門コーディネーターを派遣し、その地域の資源や課題を可視化し、事業を立ち上げる人材をマッチングしています。すでに13地域で90のプロジェクトを推進しています。
AIで熟達者の技能を伝承
伝統工芸や製造現場で問題となっているのは、熟達者と後継者の不足による技能継承です。こうした現状を踏まえLIGHTz(茨城県つくば市)は、技能継承を人工知能(AI)によって実現できるプラットフォームを開発、提供しています。熟達者の思考をネットワークで可視化、AIに落とし込んで、自治体などとの連携を進めていきます。現在、製造業とスポーツをはじめ、農業、教育の4分野で進められています。
COVID-19が契機となり、自治体が自発的に取り組む動きが顕在化しているため、地方創生型スタートアップの活躍の場が広がることを期待しております。
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