AIの活用も相次ぐ
スタートアップと大企業や自治体との協業事例も相次いでいます。IoTベンチャーのチカク(東京都渋谷区)とセコムは、高齢者向けの新サービス「まごチャンネル with SECOM」を開発、セコムを通じて販売を開始しました。動画や写真などを通じてコミュニケーションを楽しみながら、見守りができるのが特徴です。
見守りセンサーシステム事業などを展開するエコナビスタ(東京都千代田区)はヒューリックと提携し、AIやIoTを活用したスマートシニアハウジング構想に着手しました。神奈川県ではエクサウィザーズ(東京都港区)が開発を進める要介護度予測AIの実証事業を行いました。
今回は成長著しいスタートアップ群の中から人材不足などの市場課題を踏まえ、ロボットやAI事業などを展開する5社を紹介します。
上り坂も快適な“手押し車”
RT.ワークス(大阪市東成区)は、高齢者が外出の際に活用する手押し車「シルバーカー」の弱点を克服した、歩行アシストロボット「RT.2」を販売しています。上り坂ではパワーアシストが働いて楽な歩行を実現する一方で、下り坂では自動ブレーキで減速。坂の途中で手を放してしまっても、センサーによる感知で自動停止します。すでに介護市場で5000台の販売実績があります。
IoT見守り
高齢者の体調の急変や事故を未然に防止する次世代型見守りサービスを提供するのが、エコナビスタです。大阪市立大学と共同開発した独自のアルゴリズムによって、疲労回復や快眠など健康維持のための指数を用いてデータを解析し、健康面でのアドバイスを行います。睡眠と疲労回復に影響を及ぼす製品や食品を共同開発するため、アパレルや寝具、食品メーカーとの協業にも取り組む考えです。
分身ロボット
利用者のもう一つの身体として、あたかもその場にいるようなコミュニケーションが可能な分身ロボット「OriHime」シリーズを展開しているのが、オリィ研究所(東京都港区)です。ロボットにはカメラやマイク、スピーカーが搭載されており、タブレット上のアプリを通して直感的に操作を行えます。難病など身体的なハンディキャップがある人はもちろん、健常者の新しい働き方にも寄与します。
施設と潜在介護士のマッチング
介護人材不足の問題を解決するため、介護ワークシェアリングサービス「カイスケ」を展開しているのがカイテク(東京都港区)です。人手が不足している介護施設と、空いた時間を有効活用したい介護士や看護師との間を、単発案件に絞り直接的にマッチングする仕組みです。「慢性的な労働力不足」といった事業所の課題と、介護士の「副収入を得たい」「複数の事業所を見比べたい」といったニーズに応えます。
約10秒で尿を解析
ユカシカド(東京都渋谷区)は、採尿を通じ栄養の過不足を評価できる世界初のパーソナル郵送キットを提供しています。1週間程度でスマートフォンやパソコンから結果を閲覧できる点が特長です。また、簡易版もリリースしました。専用の検査シートに尿をつけ、シートの変色具合を専用アプリで読み込むと約10秒で解析が完了するので、ビタミン・ミネラル・食事の質などを評価できます。
COVID-19に罹患した場合、高齢者や基礎疾患を持つ人の致死率が高いため、高齢者・介護施設では、より高度な対策が求められます。それだけに、ケアテックベンチャーのさらなる飛躍に注目が集まります。
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