経営経験のない若手やミドルの抜擢によるリスクに目を向ける方もいらっしゃいますが、経営者という立場で事業を俯瞰し、赤字に苦しみながら限られた情報を基に意思決定をする経験は、次世代リーダーを育成する絶好の機会と捉えることもできます。
今回は、大企業の中で様々なハードルを乗り越えて事業を立ち上げた20~30代社長がどのような事業を展開しているのかについて、ご紹介します。
無人AI決済システム
店舗に足を踏み入れた時からカメラが追って、手に取った商品を自動認識し、清算ゾーンで交通系ICをタッチすれば完了する無人AI決済システムを提供するのが、JR東日本スタートアップ発の「TOUCH TO GO」です。先行して導入した高輪ゲートウェイ駅の店舗では認識精度が90%を超えています。将来的には、JR東日本グループ以外の小売・飲食店などにも展開し、省人化モデルを全国に広げていきます。
“飛び地”のアイデアを事業化
三井不動産の事業提案制度から生まれたベンチャー、GREENCOLLARは、日本品種の高級ぶどうを日本と、季節が反対のニュージーランドの2拠点で栽培、販売する事業を展開しています。これまでは供給時期の偏りや大規模な生産者が存在しなかったため、日本品種のぶどうは海外での認知度が低く、国内消費が9割を占めていました。今回の事業で通年供給を行えるようになり、世界市場を目指します。
印鑑に代わる電子契約サービス
三井住友フィナンシャルグループ発のリーガルテックベンチャーが、SMBCクラウドサインです。紙と印鑑で行っていた契約業務をオンラインで完結する、日本の法律に特化した弁護士監修の電子契約サービスを提供しています。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に伴って注目されているリモートワークの推進にも寄与するため、パートナーとの連携を強化して市場を開拓していきます。
三菱地所では社内の新規事業制度を活用して、2人の20代女性がMedichaという新会社を設立しました。瞑想とアート、煎茶文化を体感できるスタジオを東京・青山で運営しています。COVID-19 を踏まえオンラインメニューも展開しています。リモート疲れによるメンタルヘルスへの関心が高まっているため、独自の瞑想コンテンツを活用した新規サービスやプロダクトの共同開発などに期待が集まります。
450年の“歴史”を変革
東芝発のベンチャーであるIDDKは、450年にもわたって変化がなかった光学顕微鏡の基本原理を変えました。適用したのは半導体のメッシュによって観察する技術です。レンズで拡大する技術を使わずに小さなデバイスでの観察が可能になるため、操作性や携行性に優れたデバイスを自社で開発するとともに、オープンイノベーションによる医療用検査キットの開発などにも力を入れていきます。
大企業は時代の要請に即した子会社を生み出してきました。ウィズコロナによって新たな事業モデルが求められる中、大企業発ベンチャーの活躍の場は広がりそうです。
【Fromモーニングピッチ】では、ベンチャー企業の支援を中心に事業を展開するデロイト トーマツ ベンチャーサポート(DTVS)が開催するベンチャー企業のピッチイベント「Morning Pitch(モーニングピッチ)」が取り上げる注目のテーマから、日本のイノベーションに資する情報をお届けします。アーカイブはこちら