Fromモーニングピッチ

個性派AIベンチャーが続々 アフターコロナの知的創造活動を変える

磯部尚志
磯部尚志

 デロイトトーマツベンチャーサポート(DTVS)です。当社はベンチャー企業の支援を中心に事業を展開しており、木曜日の朝7時から「Morning Pitch(モーニングピッチ)」というイベントを開催しています。毎週5社のベンチャーが大企業の新規事業担当者や投資家らを前にプレゼンテーションを行うことで、イノベーションの創出につなげるのがねらいです。残念ながら新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策のためオンライン開催となっていますが、いずれ会場(東京・大手町)でのライブ開催に戻す予定です。

 モーニングピッチでは毎回テーマを設定しており、それに沿ったベンチャーが登場します。ピッチで取り上げたテーマと登壇ベンチャーを紹介し、日本のイノベーションに資する情報を発信する本連載。今回は関連市場を含めると、急激な伸びを示している人工知能(AI)です。

 テーマ概観を説明するのは磯部尚志です。ベンチャー企業の開発責任者などを経て当社に入社しました。力を入れているテーマは「テクノロジー×コンサルティング」で、主にAIやデジタルトランスフォーメーション(DX)の領域に取り組んでいます。

 市場は拡大の一途

 まず日本の市場動向についてお話しします。分析サービスやソリューションなどを含めたAI関連市場の規模は、2015年時点では2000億円にも満たなかったのですが急激に成長しており、2030年には2兆円を大きく上回る規模にまで拡大するといわれています。領域別にみた場合、金融と公共に次いで、次世代通信規格「5G」を巡る動きが活発な情報通信や、製造領域の伸びが目立っています。ITの調査会社であるアイ・ティ・アールによると音声合成や翻訳などAIの主要6技術の売り上げ規模は18年度で約200億円でしたが、23年度には3倍強の640億円へと拡大する見通しです。とくに顕著な伸びを示しているのが画像認識と言語解析で、21年以降は画像生成の伸びに注目が集まっています。

 人の発言を予測、分析

 AIは可視化と分析、対処という3分野で人間による知的創造活動の最大化に寄与しています。可視化分野では、白黒で撮影したアナログの画像を最新のデジタル技術によって再度マスタリングを行い、AIによってカラーを自動的に付けるという作業が可能になりました。顔認証の分野では顔の特徴を認識して個人を特定するところまでできています。

 可視化の先の分析という分野では、前後の文章を踏まえ「この人は何を言おうとしているのか」といったことを分析するようなエンジンが出てきています。今までは「何を予測しなければならないのか」といったところを定義する必要がありましたが、予測の分析すらも自動化できるようになりました。

 対処の中で計画・最適化という部分では、発展途上ではありますが、AIが自律して制御しながら学習し合うようになるのではと言われています。

 今後のAIトレンドは画像や自然言語の解析など、さまざまな用途に利用できるコモディティ型へとトレンドがシフトする一方、においなど特定の機能に特化した技術が顕在化、二極化するとみられています。

 時速60キロでひび割れ検出

 画像解析の領域ではハード・ソフトの技術が向上したことで、ひとつの画像からありとあらゆるものを検知できるようになっています。例えば車は時速60キロで走りながら、道路のひび割れを検出できます。また、ディープラーニング技術などを融合した画像認識で、一度に多数の製品を、個々の名称に至るまで正確に検知することが可能になりました。万引きの常習者など指名手配犯を登録しておくと、その人がやってきたらアラートを出すような技術も実用化しています。

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