海外情勢
重症者最多の韓国、ウィズコロナに誤算
【ソウル=桜井紀雄】韓国政府は25日、新型コロナウイルスの重症患者数が612人に増えたと発表、昨年の感染拡大以来、初めて600人を超えた。重症者用の病床が逼迫(ひっぱく)し、防疫措置緩和で段階的な日常生活回復を目指す「ウィズコロナ」政策は開始から3週間余りで曲がり角に直面している。
1日当たりの新規感染者は24日の発表で4115人と最多を更新した。25日の発表でも3938人とこれに次ぐ多さを記録した。
韓国政府は1日から、飲食店の営業時間制限を撤廃するなどの「ウィズコロナ」政策を開始。1日当たりの新規感染者が5千人まで増えても医療体制に問題はないとみていた。国民の79・3%(25日発表)がファイザー製▽モデルナ製▽アストラゼネカ製-といったワクチンの接種を終えており、大半が感染しても重症化は避けられると踏んでいたためだ。
だが、重症者の85%が60代以上で、接種を終えた高齢層で重症者が目立って増加。首都圏で重症者用の病床稼働率は83・9%に達し、入院できずに待機中に死亡する人も相次ぐ。「癌(がん)患者用の病床が足りない」との声が上がるなど、医療全体に影響が及んでいる。
金富謙(キム・ブギョム)首相は24日の会議で「予想より深刻だ」と危機感を示し、防疫措置を再強化する「非常計画」の発動を検討する必要性にも言及した。韓国政府は、今年上半期にワクチンを接種した高齢層で予防効果が落ちているとみて、追加接種を急いでいる。