診療報酬めぐり「日医」と「財務省」攻防激化
厚生労働省が令和2年度の「医療経済実態調査」を公表したことで、医療機関がサービスの対価として受け取る診療報酬の4年度改定に向けた調整が本格化する。日本医師会(日医)は新型コロナ禍が医療体制に与えた影響を踏まえ、医師の収入に直結する「本体部分」のプラス改定を主張。これに対し高齢化を背景に医療費を抑制したい財務省は、マイナス改定を求めるなど攻防は激化している。
日医の中川俊男会長は24日の記者会見で、本体に関し「躊躇(ちゅうちょ)なくプラス改定とすべきだ。新型コロナ対応を通じて医療現場は疲弊している。補助金頼りでは安定した経営はできない。診療報酬で手当てしなければ地域医療を立ち直らせることができない」と述べた。
調査結果によると、一般病院の利益率はマイナス6・9%となり元年度に比べ悪化した。厚労省の担当者は「感染拡大で受診件数や手術件数が減っている影響が大きい」と分析。コロナ関連の補助金を含めると0・4%の黒字になるが、後藤茂之厚労相は24日の記者会見で「黒字は非常にわずか」との認識を示した。
これに対し「支払い側」と呼ばれる健康保険組合連合会(健保連)などは24日、厚労省に「少子高齢化は確実に進み、支え手が減少する。(本体を)引き上げる環境にない」と記した要請書を提出した。
財務省は8日の財政制度等審議会の分科会に提出した資料に「マイナス改定を続けることなくして医療費の適正化は到底図れない。躊躇なくマイナス改定をすべきだ」と明記した。
近年の改定では、薬価を引き下げ、捻出した財源を本体に回すことで、本体はプラス改定にし、全体でマイナスにしている。2年前の前回は薬価を1・01%下げ、本体を0・55%上げ、全体で差し引き0・46%のマイナス改定とした。
政府は年末の4年度予算編成で改定率を決めるが、時の首相の意向を無視して決まることはない。来夏に参院選を控える中、日医などの関係団体の意向、感染状況の行方、医療機関への負荷などを総合的に勘案して判断することになる。
(坂井広志)