インドの感染者激減、首都で抗体保有率「97%」 ワクチン外交再開
【シンガポール=森浩】インドで新型コロナウイルスの新規感染者が急減している。5月上旬には1日当たり40万人を超えたが、今月23日には7579人にまで減少した。国民の半数以上がワクチンを1回以上接種したことに加え、国民の多数が感染したことで抗体保有率が高まったことが背景にあるとの見方もある。政府は感染状況の改善を受け、途上国を中心にワクチン輸出も加速させる構えだ。
感染力が強いデルタ株が初めて見つかったインドは3月下旬から感染の第2波が押し寄せた。1日当たりの死者が6千人を超える日もあり、火葬場が足りずに遺体が川に流される様子が報じられていた。
その後、新規感染者は減少に転じている。政府は今月上旬のヒンズー教の祭典「ディワリ」で人の往来が活発化し、感染が再拡大することを警戒したが、大きな影響はなかった。
感染者減少の理由は定かではないが、要因の一つに挙げられるのが高い抗体保有率だ。9~10月に首都ニューデリーで2万8千人を対象にした調査によると、新型コロナの抗体保有率は97%に上ったという。サンプル数が少ないとの問題も指摘されるが、地元政府は「5月のような破壊的な感染の波が起きる可能性は低い」と分析している。
感染が深刻な状況を脱したと判断したインドは10月中旬から、国内需要を優先させるために一時停止していたワクチン輸出を再開した。世界保健機関(WHO)は今月3日、インド製薬企業が開発したワクチン「コバクシン」の緊急使用を承認しており、今後の輸出に弾みがつきそうだ。今月15日からは外国人観光客の受け入れも再開した。
ただ、政府は国民の危機感が緩むのを避けたい考えがある。1回目のワクチン接種を受けた国民のうち、1億人以上が2回目を受けていない。血中の抗体量(抗体価)は時間の経過とともに減少するとされ、政府は引き続きワクチン普及を進めていく方針だ。