■感染再拡大による動線の寸断が打撃に
韓国銀行は、内需落ち込みの主な要因として、外食や宿泊などサービス関連の個人消費が減少したことを指摘している。その背景要因を考えると、6月下旬から韓国国内で感染が再拡大し、動線が寸断された影響は大きい。韓国政府も、動線が寸断されたことによる消費の減少に世界的な供給制約が上乗せされたことが7~9月期の内需を圧迫したと評価している。
世界的に見ても夏場の感染再拡大によって飲食、宿泊、交通関連の支出が減少し、景気回復ペースが弱まった国は多い。また、東南アジアで感染再拡大によって動線が寸断されて自動車部品や車載半導体の調達が減少したことは、韓国国内での設備投資を減少させた。
ただし、感染の再拡大だけが7~9月期の内需落ち込みの要因ではないだろう。個人消費などの減少には、複合的な要因が影響しているはずだ。
■雇用環境の悪化、家計の過剰債務、物価上昇の三重苦
消費が伸びない主な要因に、雇用環境の悪化、家計の過剰債務、物価上昇がある。コロナ禍以前から雇用と債務の問題への懸念は高まってきた。一つの見方として、コロナ禍は韓国経済の構造的な問題を一段と深刻化させ、内需が追加的に圧迫されている可能性がある。
まず、韓国の雇用環境は失業率のデータが示す以上に厳しいとみられる。2017年から2020年の間、韓国では従属型の労働者(企業などに勤める人)に占める臨時の雇用(非正規雇用)者の割合が20.62%から26.1%に上昇した。同じ期間、OECD加盟国での平均割合は12.18%から11.42%に低下した。一つの解釈の可能性は、正規社員として働きたいものの非正規職に就かざるを得ない人の増加だ。正規雇用の機会が減少しているといってもよいだろう。
■約8年ぶりに電気料金が値上げされる
また、家計の債務残高の増加も深刻だ。その背景要因は多い。アジア通貨危機の後、韓国政府は個人消費の増加と税収強化のためにクレジットカードの普及を重視した。その結果、カードでの支払いを選択する人が増え、社会全体で借り入れへの抵抗感は低下し、債務が増え始めた。
近年の韓国では首都圏のマンションなど不動産市況が上昇し、住宅取得のための借り入れも増えた。その後、コロナ禍の発生によるサービス業の業況悪化、本年の6月ごろからの利上げ期待を反映した短期ゾーンを中心とする金利上昇などによって、借り入れに慎重になる、あるいは返済負担の増加を懸念する個人が増え、消費が減少したとみられる。それは内需を圧迫する。
3点目が物価上昇だ。韓国では生産者物価が上昇し、徐々に消費者物価も上昇している。物価上昇は消費者の節約心理を強める要因であり、7~9月期の個人消費に負の影響を与えただろう。10~12月期、韓国では世界的なエネルギー資源の価格上昇によって約8年ぶりに電気料金が引き上げられるが、政府はすでに値上げが決まったもの以外の公共料金の年内据え置きを表明した。それは、物価の上昇を一段と警戒する消費者が増え、内需に追加的な下押し圧力がかかるとの不安が高まっているからだろう。