政府が新型コロナの対処方針改正へ デパ地下など人流抑制強化
政府は新型コロナウイルス感染の急拡大を受け、人流を抑えるため、行動制限の強化に乗り出す方針だ。東京都での人流5割削減などを盛り込んだ、コロナ対策分科会による12日の提言を踏まえ、飲食店にとどまらず「急所」を拡大し対策にあたる。すでに6都府県に発令中の緊急事態宣言の対象地域拡大や、31日までとしている期限延長を検討しており、来週にも基本的対処方針を改正し、具体策を示す見通しだ。
菅義偉(すが・よしひで)首相と関係閣僚による13日の協議で、閣僚が「提言に書いてあることをしても感染者は減らないかもしれません」と語ると、首相は驚いた表情を浮かべた。
それでも何もしないわけにはいかない-。そんな雰囲気が漂う中、商業施設での人流抑制に取り組むことを確認した。特に百貨店の地下食品売り場(デパ地下)は従業員が密になりやすく、幅広い地域から来店するため、感染が拡大しやすいとの見方が強い。
これまで飲食店対策に軸足を置いてきたが、感染力の強いインド由来の変異株(デルタ株)への置き換わりが急速に進み、クラスター(感染者集団)は多様化した。
厚生労働省が報道などを基に集計した、2人以上の感染者が出た事例の累計数は、10日時点で9735件(前週比407件増)。最多は「企業等」の2053件(143件増)で、7月上旬まで最多だった「高齢者福祉施設」の1788件(18件増)を超えている。
高齢者へのワクチン接種が進んだことが大きいが、同時に、基本的対処方針にすでに明記している「出勤者数の7割削減」という目標が空文化していることを裏付けている。
クラスターはこのほか、「飲食店」1734件(42件増)、「学校・教育施設等」1360件(76件増)などと続く。
分科会委員の東邦大の舘田一博教授(感染症学)が記者団に「(感染の場が)職場や学校、家庭内に広がっている。商業施設、デパートなどを閉じるようなより強い対策を考える必要がある」と語ったのは7月28日。政府の動きは鈍い。(坂井広志)