国内

五輪組織委の新会長人選混迷、スポーツ界の存在薄く 女性候補期待も育成途上

 日本のスポーツ団体が強い存在感を示せぬまま、一連の騒動は大きな節目を迎えた。

 「昨夜(武藤敏郎組織委事務総長から)2、3回私に電話がかかってきて、(2人で)白紙撤回をいつ言うかという話をした」。森氏の後任として一時、名前の挙がった川淵氏は12日、記者団に対し、会長要請辞退をめぐる水面下の動きを明かした。要請を白紙に戻そうとする事務総長は誰の意向を受けたのか。

 森氏が女性蔑視とも受け取れる発言をした後、後任の会長候補として、もともと「女性候補」を推す声もあった。

 日本オリンピック委員会(JOC)はスポーツ庁から委託を受け、スポーツ団体における女性役員の育成事業を展開。昨年からは、女性の役員候補者や指導者などに対し、専門知識を習得できるeラーニングの環境を整えるなどしてきた。ただ、大会組織委の会長を務められる程の人材ともなると、実績なども含め候補者は多くない。

 こうした中、森氏は日本サッカー界などで功績ある川淵氏に“白羽の矢”を立てる。ところが、世論などからの反発は予想外に大きく、当初のもくろみは完全に外れた。

 JOC関係者は「コロナ禍もあって五輪やスポーツにとって厳しい局面。誰がなっても批判がゼロということはない。若い人を立てたとしても、“傷”が付いて、将来がつぶれてしまうのでは」と人選の困難さを嘆く。 

 後任探しを含む一連の事態収拾をめぐり、スポーツ界の存在は当初から薄いままだった。女性蔑視とも取れる森氏の発言が出たのは、3日のJOC評議員会閉会後の挨拶でのこと。「森さんは『女性理事が増える中で、これから頑張れよ』と話すつもりが、あの不適切な発言になってしまった。最初、山下泰裕JOC会長の(問題を指摘する)歯切れは悪かった」(関係者)。この背景には、JOCの理事の女性比率目標を定めたガバナンスコード策定をめぐり、森氏に相談に乗ってもらっていたこともあった。

 山下氏は森氏の謝罪会見翌日などに「不適切な発言だった」との認識を再三、示した。ただ、五輪の基本原則であるジェンダー平等に関して、より敏感であれば、違った対応と展開もあったはずだった。スポーツ界が今後、ジェンダーの問題、後任の会長選出で主体的、積極的に関わっていけるかが問われる。

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