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緊急事態宣言“再発令”企業はどう乗り切る? 危機管理専門家の見解は

SankeiBiz編集部
SankeiBiz編集部

遅きに失した緊急事態宣言

――西村康稔経済再生担当相は経団連と日本商工会議所、経済同友会の経済3団体代表とのオンライン会談で、テレワーク推進による出勤者7割削減を要請しましたが、今回の緊急事態宣言は、国民生活を幅広く制限した昨年春の宣言と異なり「限定的、集中的」な措置となっています。この点はどう評価していますか。

福田教授:

 今回の緊急事態宣言の特徴を言えば、それは「戦術的な使用」です。緊急事態宣言は出すが1都3県に限定したうえで、飲食店を中心に規制しています。昨年4月の緊急事態宣言のような学校の休校もありません。人と人の接触機会を「最低7割、極力8割」減らすとした前回とはだいぶ様相が異なります。

 本来は、前回のように厳しい社会規制を伴う緊急事態宣言が通常の使い方ですが、今回は戦術的に効果を発揮させようとして、手軽に宣言を使っている印象を受けます。今回の宣言による効果は限定的になるものと思われます。感染者数、重症者数をドラスティック(劇的)に減らすのは難しいのではないかと思います。

 菅政権は感染防止対策とともに経済活性化、再生に比重を置いてきました。観光支援事業の「Go To トラベル」や飲食業界を支援する「Go To イート」がそうです。感染症対策と経済活性化という「車の両輪」を進める戦略、戦術を続けてきたのです。感染状況が落ち着いているときは経済を回し、感染が拡大してきたらその対策を強化する。こうしたハンドリングを取るという方法しかなかったのです。日本の状況を大きくとらえれば、それしか取る道はなかったと思います。このスタンスは今後も崩せないでしょう。

 ただ、緊急事態宣言を出すタイミングとしては、発令するのであれば昨年12月の初旬が適当であったように思われます。12月中旬から年末年始の行動抑制をすべきだったのは明白です。経済を回すことを主軸に置いていたので判断が遅れたのだと思います。

 感染症対策の原則は、「早く・強く・短く」。この3つが大事なのです。緊急事態宣言を早く出せば出すほど、短い期間で効果を発揮し、そのタイミングが遅くなればなるほど、問題は長期化するのです。

――菅首相は「1カ月後には必ず事態を改善させる」との決意を表明しましたが、危機管理の観点から言えば、宣言を出すタイミングが遅かったということでしょうか。

福田教授:

 今回の緊急事態宣言のタイミングとしては遅きに失したように思えます。今の状況は「遅く・弱く・長く」という結果になるのではないかと懸念しています。これは先ほど言った原則とは真逆の方向です。菅首相は「日本でも2月下旬までには何とか(ワクチンを)接種したい」と言っていますが、ワクチンの供給が始まるまで、弱めの規制で、だらだらと続けていく戦術を取っているようにも見えます。

 そうなれば、経済全体に大きなダメージがあります。経済への影響を最小限にするためには、強い規制を短く敷くことが大切です。そして、短い期間で発生した経済的損失を補償していく。手厚い補償をしても、その対象の期間は短くて済みます。それが経済合理性につながるのではないかと思います。

 「遅く・弱く・長く」という戦術では、補償とセットであっても、基礎体力のない事業者は耐えられない恐れがあります。

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