タイが日本人客受け入れ月内再開に二の足 感染多発警戒、検討作業は中断
新型コロナウイルスの新規国内感染者が2カ月間も発生していない観光立国タイで、日本人旅行客の受け入れをどうするか議論が続いている。保健当局はつい1カ月前までは8月から再開したいとしていたが、日本で新規感染者が急増。さらには感染したアフリカの外国軍人らが入国していたことが分かり、検討作業も中断を余儀なくされた。このまま抜本的な対策が行われなければ「10月になっても再開は難しい」という当局者もいる。課題の多くは日本側にあるという認識だ。
3段階で実施予定
タイ政府は6月下旬、感染拡大に歯止めがかかったとみられた日本、香港を含む中国、韓国、シンガポールからの短期出張者や医療観光の患者らの入国を認める方針を固めた。その後の外国人旅行客の受け入れ緩和「トラベル・バブル」実施への布石とするはずだった。
観光客の受け入れは8月から3段階に分けて実施する予定だった。対象とする国は「過去30日以上にわたり流行が発生していないこと」が条件。当時の日本はこれに該当するというのが保健当局の認識で、産業や交換留学など関係の深い日本からの旅行客に期待していた。
観光客は出国前にPCR検査を済ませた後、タイ入国時にも検査。陰性だった場合は、指定先の観光地のいずれか1カ所に2週間滞在させ、その後の検査でも陰性であれば国内を自由に旅行させる計画でいた。指定先としては、人気の高い北部チェンマイ、南部のサムイ、クラビ、プーケット、東部のパタヤを候補地としていた。
ところが7月上旬以降、東京を中心に日本で感染者が多発するようになると、検討の留保を余儀なくされることに。政府によるトラベル・バブルの説明も少なくなり、観光庁の当局者は実施に向けた準備が中断していることを非公式に認めた。その後の動向を見守る必要があった。
隔離免除の軍人陽性
そこへ降って湧いたのが、7月半ばのエジプト人の軍人とスーダン人外交官の娘の相次ぐ感染判明だった。2人とも感染したのは国外とみられるが、入国時に実施した検査で、後に陽性が分かった。
このうちエジプト人軍人は、外国人であれば誰もが求められる2週間の隔離を免除され、東部ラヨーン県の百貨店などを訪問していた。出国後、感染が判明した。一方、スーダン人の女児はバンコクのコンドミニアムでの自主隔離となったが、一般のエレベータなどを利用していた。陽性が分かると、周辺の飲食店やホテルでは予約が一斉にキャンセルとなった。