海外情勢

南アがコロナで再び規制強化 酒類販売禁止で病院負担減

 【カイロ=佐藤貴生】南アフリカが新型コロナウイルスの感染急増を受けて夜間の外出制限を再開した。また、交通事故やけんかで負傷者が増えれば病院の感染者受け入れ態勢に支障が出かねないとして、酒の販売禁止も再開した。政府は経済が苦境に陥るなかで段階的に規制を緩和してきたが、最近は1日当たりの新たな感染者が約1万2千人に上る深刻な状況となり、再び引き締めざるを得なくなった。

 南アの感染者は27万人以上、死者は4千人を突破し、アフリカで最悪の事態が続いている。ラマポーザ大統領は12日、「コロナの嵐は私たちが知る以上に獰猛(どうもう)で破壊的だ」と述べ、3月下旬に始め、段階的に緩和してきた外出制限などの規制を再開すると表明した。

 ラマポーザ氏はさらに、「医療機関は、飲酒に関連する負傷者により負担が増えれば対応不能になりかねない」として、春に約2カ月行った酒類販売禁止措置の再実施にも踏み切った。

 南アでは週末などに知人と酒盛りをする人が多く、けんかや飲酒運転、家庭内暴力(DV)で負傷者が出る原因とみられてきた。医師らも酒類の販売禁止で、実際に病院の負担が軽減されたと評価していた。

 新たな外出制限は夜9時から朝4時まで。街頭でのマスク着用の義務化のほか、発令中の非常事態宣言を8月15日まで延長するとしている。

 感染拡大は人口が多いヨハネスブルクや首都プレトリアが最も深刻で、両都市を管轄する行政トップも感染が確認された。7月末から9月末にかけてピークが訪れ、年末までに5万人が死亡するとの予測もある。

 南アの感染状況はアフリカで最悪とはいえ、検査態勢が他の国々より充実しているために人数が増えているという事情もある。

 ロイター通信は8日、100万人当たりの感染検査実施数を地域別に推計した結果、欧州は7万4千件超、アジアも7650件に達しているが、アフリカは4200件にとどまっていると伝えた。世界保健機関(WHO)の専門家は5月下旬、アフリカで検査件数を増やさなければ「サイレント・エピデミック」(静かな感染拡大)が起きうると警告していた。

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