コロナ禍の新興国 経済打撃深刻 活動再開も医療不備で感染急拡大
世界全体の新型コロナウイルス感染者が1200万人、死者が50万人を超えた。米国の勢いが衰えない一方で、感染拡大の中心地は中国・武漢から欧米を経てブラジルやインドなどの新興国に。経済活動再開が進む中、貧困や脆弱(ぜいじゃく)な医療体制を背景に感染爆発や死者の続出に歯止めがかからず、第2波も広がりつつある。
貧困層や先住民直撃
「世界は危険な新局面に入った」。世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長はパンデミック(世界的大流行)の加速に警戒感を強めている。
WHOによると、4月に7万~9万人ほどだった世界の1日の新規感染者数は、7月に入り20万人超を記録。その約半数が中南米に集中し、南アジア、中東でも増え続けている。
感染者数上位10カ国に入ったブラジルやロシア、インド、ペルーなどの新興国、途上国は医療の遅れが深刻だ。低中所得国の公的医療支出は国内総生産(GDP)比で2.8%と、高所得国の7.7%と開きがある。
ブラジルでは感染の波が貧困層や先住民を直撃。感染者数は180万人を超え、先住民の死亡率はその他の住民の約2倍に上る。専門家は、コロナを「ただの風邪」と言い切るボルソナロ政権の“怠慢”が被害拡大を招いたと批判し「アマゾン地域は医療投資が不十分だ」と訴える。
厳格措置も効果なく
世界銀行が6月に公表した世界経済の見通しでは、感染拡大に伴う景気後退で新興国・途上国の成長率がマイナス2.5%になるとし、貿易や観光に依存する新興国への打撃はより大きいとする。
感染者が6番目に多いペルーでは、3月に世界でもまれなほど厳格な措置を取ったが流行を止められなかった。冷蔵庫普及率や失業保険加入率の低さから、市民は感染が怖くても不衛生な市場への買い物や働きに出ざるを得なかったからだ。経済成長が続いてきたが、同国の経済学者は「収入は増えても安定した雇用は少ない。新興国の地位はもろい」と嘆く。
長期化する移動制限や経済活動の自粛による困窮化を受け、インドやブラジルは規制を緩和し、一層の感染拡大が懸念される。4月から段階的に経済活動を再開したイランでは、1000人を割っていた1日の感染者数が6月に2000~3000人台へ再上昇。感染者数のピークは第1波を上回るありさまだ。
約13億人が住むアフリカでは、累計感染者数は46万人超(7月12日現在)へ増加。WHOは対策に失敗すれば、サハラ以南を中心に最大で4400万人が感染し、19万人が死亡する恐れがあると警鐘を鳴らしている。(共同)