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キャッシュレス主流も根強い「商品券」 あえて選ぶ理由とは?

 全国の自治体が新たなキャッシュレス決済のポイント還元制度に乗り出している。政府の制度は6月に終わったが、新型コロナウイルスの影響で落ち込んだ事業者の売り上げを支える必要があり、独自に財源を捻出して取り組む。手軽に導入でき入金も早いキャッシュレス決済は大都市圏では即戦力とみなされている。ただ、人口が少なくお年寄りの多い地域では、まだまだ商品券に軍配があがっているようだ。(織田淳嗣)

 スピード感

 「4月に行ったアンケートでは90%以上の事業者が20%以上の減収だ。スピード感を持って消費需要を喚起する必要がある」

 6月30日、岡山市の大森雅夫市長は定例記者会見で強調した。同市がこの日発表した、スマートフォン決済「PayPay」(ペイペイ)を使ったキャンペーンに関連してのことだ。

 買い物額に対して最大20%のポイントが還元されるキャンペーンを、8月の1カ月間行う内容。消費の喚起策としては、商品券やクーポン券も念頭にあったというが、市の担当者は「参加する事業者の募集、委託業者の選定など、準備だけでも4カ月はかかる」と「スピード感」を重視したことを打ち明ける。

 岡山市の人口は約72万人(今年4月1日現在)。商品券印刷、配布となれば手間も多い。キャンペーンが終われば参加業者は請求書を書くが、それを受けた市側の作業も必要となり、「入金までにはさらに2カ月程度を要する可能性もある」(担当者)という。

 そこで市が選んだのはキャッシュレスサービス。参加業者を市が募集する必要はなく、印刷や配布の手間も省ける。

 市は20%のポイント還元を肩代わりする原資として、市は6月補正予算で8億円を計上した。40億円の需要喚起を見込む。市によると市内全体の1カ月あたりの消費支出額は600億円で、大森市長は「全体の6・7%と非常に大きな数字になる」と強調した。

 ペイペイに熱視線

 ペイペイの運営会社(東京)は今月1日、岡山市を含めた全国12市町との連携事業を進めていると明らかにした。自治体が指定した店舗でペイペイで決済すると、金額に対して最大10~30%分のポイントを還元するもので、今後も対象の自治体を広げる。

 ペイペイの広報担当者は「弊社から話を進めることもあったが、自治体から声をいただくことが多かった」と手応えを示す。岡山市の場合も市側からペイペイに提携を持ちかけていた。

 新型コロナ禍で、自治体ではキャッシュレス導入が大きな関心事となっているようだ。

 東京都港区は、区内でのホテル宿泊や飲食店利用でキャッシュレス決済を利用した場合、最大50%分のポイントを還元する制度の導入に向け、3億円を計上した。千葉県市川市も「10%還元」に向けて6月、20億円の投入を決めた。岡山県倉敷市も5億円を計上し、9月からポイント還元を行う。伊東香織市長は「秋はもともと観光シーズン。倉敷でいろいろなものを買おうと思っていただけるよう、後押ししたい」と意気込む。

 あえて商品券の理由

 一方、消費活性化策に商品券を選んだ自治体もある。

 岡山県勝央町は今月4日、町内で使える1万2千円分の買い物券「元気なまち復活応援券」の配布を始めた。町内の全約4600世帯の全約1万1100人が対象。5月の臨時町議会で予算1億3400万円の投入を決め、1月あまりで配布にこぎつけた。

 商品券を選んだ大きな理由は、電子決済になじみのない人が多いこと。地区の65%以上の人口は3割。お年寄りらに配慮し、商品券はタクシーの乗車に使うこともできるようにした。担当者は「地域の実情に即した形で、消費を盛り上げたい」と話している。

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