主張

少子化大綱 国難直視し抜本的対策を

 結婚したい、子供がほしいと願う男女が、その希望をかなえられる環境を作らなければ少子化の進行はとめられない。

 急速な人口減少は国難である。放置すれば国力が衰え、国民の暮らしに大きな影響が及ぶ。実効性のある対策を着実に進めなければならないが、果たして政府の対策は十分だといえるのか。

 今後5年間の政策指針となる少子化社会対策大綱が先に閣議決定された。数値目標として子育て世代が望み通りに子供を持てる場合の「希望出生率1・8」の実現を掲げたのが特徴である。

 だが、道のりは険しい。厚生労働省によると、昨年の合計特殊出生率(1人の女性が生涯に産む子供の数)が前年比0・06ポイント低下し1・36となった。出生数は前年比5万3千人減の86万5千人だ。それぞれ4年連続の低下である。

 希望出生率1・8という数値は安倍晋三首相が平成27年から掲げ、政府は子育て支援を大幅に拡充した。消費税率引き上げに際しては増収分の使途を変えて幼児教育無償化などに振り向けた。それでも出生率低下に歯止めがかからないことを反省し、今後の対策に生かさなくてはならない。

 大綱には、子供の数や年齢に応じた児童手当の充実や、高等教育無償化の拡充の検討、多くの子をもつ世帯への支援などを盛り込んだ。男性の育児休業取得率を30%に引き上げる目標もある。

 第1子はもちろん、第2子や第3子を産み、育てることをためらうことがないよう、社会全体で支えなくてはならない。子育てに寄り添う伴走型の支援を充実する必要がある。女性が一人で育児を担う「ワンオペ育児」を確実になくさなければ、希望出生率1・8の達成は極めて困難だろう。

 経済的な理由で子供を諦めずにすむよう、妊娠・出産、子育ての財政支援を手厚くするのは当然である。日本の家族関係支出は、英仏独など出生率低下が一息ついた欧州諸国よりまだまだ低い。

 これからの社会は新型コロナウイルスと共に暮らす新たな状況に置かれる。大綱は、新型ウイルス感染症にも触れ、妊産婦の感染対策を講じることや子供の見守り体制の必要性を示した。新型ウイルス対策には多額の予算が長期にわたって求められるだろう。その分、少子化対策が後回しにならないよう努めてもらいたい。

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