コロナショックが暴く「財政破綻」の嘘 赤字膨張でも金利はマイナス
新型コロナウイルス恐慌封じに向け、日本も米欧と同様、空前絶後の規模の財政出動に踏み出したが、何か変だ。政府債務を減らさないと財政破綻すると騒いできた国内の政官財学界、メディアの多数派が黙っている。緊縮財政どころではないとは小学生でもわかる真実だから、自粛しているのか。いや、そうではあるまい。そもそもデフレの国で財政破綻が起きるという理論そのものが机上の空論なのだ。
「財政破綻」とは市場で信認を喪失した国債の相場が暴落、即ち国債金利が高騰することだ。近年では2012年のギリシャが典型例で、10年物国債利回りは30%近くまで上がった。
しかしギリシャは自国通貨を持たないうえに、国債の大半を外国の投資家に買ってもらっていた。ユーロ不安が起きれば、信用度を表す格付けが低いギリシャ国債は投機勢力によって真っ先に売られるのは必然だった。しかも自前の発券銀行はないのだから、日米のようにカネを刷って国債を買い支えることもできない。
そんなギリシャや、中南米の財政、通貨不安常習国のケースを、日本に当てはめるというのはもともと無茶である。
グラフを見よう。コロナがもたらすデフレ不況阻止に向け、大規模な国債追加発行を繰り出している米欧の国債金利はコロナ・パンデミック(世界的大流行)勃発後、下がる基調にある。市場は先行き予想で動く。政府債務の膨張見通しが財政破綻の症状である国債金利高騰にならないことは明白だ。
慢性デフレでカネ余りがひどい日本の場合、金融機関の国債需要が旺盛で、買い手が金利を払う羽目になるマイナス金利でも買ってしまう。政府が100兆円規模で国債を発行しても、日銀が現状の国債購入にとどめても、金利ゼロで推移しよう。
財政破綻論者のでたらめぶりをさらけ出したのは、今や安倍晋三政権のコロナ対策の要となった西村康稔経済再生担当相の5月13日付のツイッターだ。
そのまま引用すると、「コロナ対策の諮問委員に任命した小林慶一郎氏は財政再建至上主義者との評価がありますが、任命に際し本人と何度も話しました。最近の氏の論文では、今は財政再建にこだわらず国債発行してでも厳しい状況にある人の支援を行うべきと、財政支出の重要性を主張しています。経産省の後輩でもあります」とある。小林氏は慶大客員教授兼東京財団政策研究所研究主幹で、新型コロナ感染症の専門家で構成する「基本的対処方針等諮問委員会」のメンバーに指名されている。