高論卓説

新型コロナで落ち込む日本経済 カンフル剤は消費税カットと給付金

 新型コロナウイルスによる市場の大暴落が起きている。これは、アジアに限定されていた新型コロナが欧州や米国に広がり、実体経済の劇的な悪化を招くという懸念からだ。今回の連日の暴落について、リーマン・ショックと比較する声もあるが、実は構造的に全く違うものであり、ある意味ではリーマン・ショックよりも悪質かつ深刻なものであるといえる。(渡辺哲也)

 リーマン・ショックは、金融が主導した株価暴落と景気悪化であり、債券価格の信頼低下で、銀行の信用不安が起き、銀行に資金を依存していた大企業に破綻危機が生じ、それが実体経済を悪化させた。また、ローンに依存していた個人の消費が減退したこともそれに拍車をかけた。

 それに対して、今回のコロナ恐慌は、人の移動と自由が制限されることで、消費や生産活動に影響するというものだ。最初に旅行や外食などの中小零細企業に大きなダメージを与え、次に感染拡大とそれに伴うサプライチェーン停止による企業活動の停滞を招いた。そして、最大の問題はいつ終息するか分からない点だ。

 特に今回の新型コロナは無症状感染者も存在し、潜伏期間も長いため、これを封じ込めるのは不可能に近いといえる。また、従来のように季節性のウイルスであったとしても、南半球まで広まっているため、一年を通じて感染が拡大する可能性も高い。

 ただ、治療方法や治療薬が確立すれば従来のインフルエンザ程度やそれ以下に抑えられる可能性が高いことが唯一の朗報といえる。現在、一部地域で高い致死率となっているが、これは病気そのものというよりも医療崩壊が原因であり、高齢者や慢性疾患を持った人に適切な治療が施せないためである。

 では、問題の解決に何が必要かということになるが、まずは効果がある薬の確定と治療法の確立ということになる。既にいくつかの抗ウイルス薬やぜんそく薬などに効能が認められつつあり、血清療法なども効果があるとされている。

 そして、今回の経済問題にどのように対処すればよいかということになるが、これはリーマン・ショックとは全く異なるアプローチが必要である。リーマン・ショック後、世界の金融システムは大きく改善された。国や中央銀行の介入余地があり、自己資本も増強された。その意味では金融システム上の問題は解決できない問題ではない。それよりも大きな問題は実体経済の悪化と資金不足による倒産の拡大である。もともと中小零細には体力がない企業も多く、日銭で生活している人も多い。お金の流れが止まれば、即倒産に結び付く。政府はこれに対処するために無担保・保証人なしで借りられる特別融資などを用意した。

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