文政権は「左回りで右傾化」 週52時間労働制めぐり韓国識者が痛烈批判
イ教授は文政権発足後、2大労組が政権と協力し労働政策策定に参加した経緯を説明しながら「弾力的労働時間制の議論をきっかけに、いまは民主労総が対立的立場に変わった」との見方を示した。また、「労働者が体感できるような政策の成果がないことも、政権への大きな不満になっている」とも述べた。
「韓国では市民が声上げた」
フォーラムでは、安倍晋三政権の「働き方改革」についても報告があった。甲南大の熊沢誠名誉教授は、日本の働き方改革関連法について、1カ月の時間外労働の上限が100時間未満、複数月の平均で80時間とされたことが「過労死労災の認定基準と同じ水準で、極めて不十分な残業制限だ」と述べた。一方で、日本では「急速に進む労働力不足のため、働き方改革は一定の成果が上がっている」とも指摘し、大企業では残業制限や休暇増加が進み、飲食業やサービス業などの中小企業で人材確保のために従業員の非正規から正規への転換が実現している部分もあると評価した。
また法政大の上西充子教授は「『多様な働き方』の言葉に問題点が隠れ、世論があまり動かなかった」と述べて、日本の働き方改革の問題点を指摘。「韓国では市民が主体となって政治や働き方を変えていこうと声を上げている。政権に対し、スローガンだけになっていると指摘できることがうらやましい」と評価し、韓国の労働組合や市民の労働政策への関心の高さに注目した。
岐路に立つ文政権
文政権は今後、当初の公約通りに労働政策を実行していくのだろうか。韓国紙、東亜日報によると、文大統領は昨年12月19日に開いた拡大経済閣僚会議で「最低賃金引き上げと週52時間労働は私たちの社会が必ず行かなければならない道」と強調。「現実と目標が調和するよう補完策を準備しながら、定着させなければならない」と決意を述べた。
一方で、集まった経済閣僚らに「たったひとつの雇用でも、たったひとつの投資でも多く作れるなら、政府は何でもする覚悟で、皆さんが先頭に立ってほしい」と求めるなど、厳しい経済情勢に苦慮している様子もうかがえる。
5年の任期の折り返し地点を過ぎた文政権は、支持者層の労働者側に立つか、経済回復のため財界側の主張に耳を傾けるのか、岐路に立たされているようだ。
韓国の週52時間労働制と日本の残業規制 韓国が2018年7月施行した改正勤労基準法では、残業を含む労働時間の上限を従来の週68時間から週52時間に短縮した。内訳は平日8時間、週40時間に加え、休日労働を含む残業を週12時間までとした。日本の法定労働時間は1日8時間、週40時間。2019年4月に施行した働き方関連法の残業規制で、時間外労働を原則月45時間、例外として年6カ月まで月平均80時間、1カ月100時間未満までとした。