海外情勢

マニラ初の地下鉄「日本式」 駅も人材も…比の「国家的悲願」に期待

 フィリピンの首都マニラで、同国初となる地下鉄の整備計画が進んでいる。日本が駅建設や人材育成などハードとソフトの両面で支援し、日本式がベースとなる。マニラは渋滞が激しいが、緩和の処方箋となり得る地下鉄は何度も頓挫してきた経緯があり「国家的な悲願」に期待が高まる。

 最新の計画では、マニラ北部ケソン市のキリノ・ハイウエー駅と中心部のマニラ空港などを結ぶ15駅を建設し、総延長は約30キロ。2022年に3駅で部分開業し、全線開通は25年の予定だ。

 「日本の知見を生かした災害対策技術を導入し、乗客の安全を最大限確保する」。バタン運輸次官は2月の起工式で「日本の協力」を強調した。

 日本の後押しは多岐にわたる。国際協力機構(JICA)によると、8000億円規模の総事業費のうち約6000億円の円借款を検討。先行開業する3駅の設計・施工は日本と地元建設大手の共同企業体(JV)が受注した。

 使用する車両も日本のメーカーが製造する。豪雨時に駅構内の浸水を防ぐ扉を設置し、揺れを感知した場合に電車を緊急停止させるなど災害対策にも万全を期すという。

 地下鉄は事業費が巨額で歴代政権は構想止まりだったが、インフラ整備に力を注ぐドゥテルテ大統領の誕生で計画が進んだ。トゥガデ運輸相が訪日した際、東京メトロの訓練センターや東京駅を視察し、日本の技術を取り入れたいと希望したという。

 課題は人材育成だ。安全運行を担う運転士や車掌、整備士らの習熟は急務となる。7月上旬には運輸省の担当者ら13人が訪日し、夜間の車両メンテナンス現場などで研修した。運輸省は運転士の免許制を導入し、知識や技術の底上げを図る。

 JICAフィリピン事務所の川淵貴代次長は「中長期的にフィリピン人自身の手で維持管理していけるよう継続して支援したい」と話した。(マニラ 共同)

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