問われる「ふるさと納税」の使い道 無駄遣い回避へ透明性確保が課題
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茨城県西部の境町で7月中旬に開かれた利根川大花火大会。観客席では町から無料招待された、ふるさと納税の寄付者約540人が約2万3000発の花火を楽しんだ。
町が寄付を活用して2017年に始めた交流事業で、今年の応募は1万8000人を超えた。まちづくり推進課の担当者は「毎年の参加者の9割は町を訪れるのが初めての人。直接関わることで、リピーターを増やしたい」と意気込む。
ふるさと納税にはもともと、寄付を通じて長く関わるファンを獲得するという導入目的もあった。返礼を地域への誘客につなげたり、独自の政策の魅力をアピールしたりして寄付を集める自治体は増えつつある。
群馬県草津町は、寄付金の一部を草津温泉の源泉「湯畑」の維持管理やトイレ整備などに充てている。返礼品には、町内の旅館などで使える寄付額の3割相当の「感謝券」を発行している。
町総務課は「受け入れ態勢を整え、返礼品で実際に来てもらえば満足度も高まる。『また行きたい』という人が増え、再び寄付に結び付く好循環になる」と説明する。
総務省の18年度調査では、寄付の際に使い道となる具体的な事業や大まかな分野を指定できるのは1708自治体で全体の95.5%に上った。しかし、寄付の総額と、活用した事業内容の両方を公表しているのは70.0%にとどまり、透明性確保が課題となっている。
東京大の宇野重規教授(政治学)は「寄付を自治体に丸投げすれば無駄遣いの温床になりかねない」と寄付者が使い道を直接点検できる仕組みが重要と訴える。
寄付を財源とした子育て支援に力を入れる北海道上士幌町。認定こども園の保育料を16年度から10年間無料化し、首都圏からの移住者を中心に100人を超す人口増を実現した。
町は、こども園への外国人講師の配置や、子供1人当たり100万円を助成する住宅建設補助など、寄付を使った事業概要や充当額をホームページで公開し、寄付者の理解を得ながら事業を進めている。
宇野教授は「人口減少や高齢化を克服するための未来像を描いた上で、ふるさと納税と連動させて政策を競い合うのは良いことだ。返礼品となる名産品があるかどうかは関係なく、どの自治体にも道は開かれている」と指摘している。