海外情勢

キルギス振興、JICAが一役 蜂蜜など特産品、世界へ販路

 中央アジアの山岳国家キルギスで国際協力機構(JICA)が、特産の羊毛や蜂蜜、果物を使った商品開発を手掛け、世界に販路を広げている。人口約610万人の10%以上がロシアなど海外に出稼ぎに出て、地方の産業構造も脆弱(ぜいじゃく)とされる国で、日本の支援が地域活性化に一役買っている。

 首都ビシケクから車で4時間。世界有数の透明度を誇るイシククリ湖南西部のショルブラク村で、20人ほどの女性がフェルトの手芸品を作っていた。29~58歳の主婦たちで子連れの母親もいる。真剣な表情で、針でフェルトを埋め込み、ヒツジやシロクマの形にしていく。

 「仕事がなかったので助かった。道具の扱いにも慣れた」。働いて5年になる30代の主婦、マディナ・サブルベコワさんは、週5日の勤務で月給は8000ソム(約1万2200円)。重さや大きさを均一にするためはかりや定規を使い、手のひらサイズのユキヒョウの小物を約1時間で完成させた。

 事業はJICAが世界で手掛ける「一村一品運動」。キルギスでは2007年にイシククリ州で始まった。JICA専門家の原口明久さんは「素材は良いが、製品化して売る仕組みがなかった」と振り返る。住民同士で共同作業する経験があまりなく、コミュニティーの活性化も課題だった。

 製品を作る生産者組合だけでなく、ブランド管理や市場調査、流通網の確保など、市場と生産者をつなぐ組織も立ち上げた。商品は国内で評判を呼び、11年には無印良品を展開する良品計画との取引が始まった。

 事業は全土に広がり、現在は約2300人が関わる。1500以上の商品を扱い、日本や欧州など10カ国以上に販路を持つ。マメ科の植物エスパルセットを蜜源とする白蜂蜜と、オレンジ色の小粒な果物シーバクソンの飲料や化粧品が評判だ。蜂蜜は滑らかで、くせのない甘さが後を引く。

 18年の売り上げは約4500万円で、目標は2倍以上の1億円だ。原口さんは「キルギスの一村一品を地域産業開発の成功モデルとし、他国に普及していきたい」と話している。(ビシケク 共同)

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