海外情勢
8人部屋に160人収容のケースも フィリピン、麻薬犯罪対策強化で刑務所過密化
麻薬犯罪に関わり、2016年10月から服役するマーティン受刑者は「人が多すぎて何をするにも集中できない。受刑者は皆怒りっぽくなっている」と不満を隠さない。
ペガラン看守長は「ドゥテルテ大統領の就任前、収容者は300~400人だった」と苦笑いする。「ここの受刑者の7割は麻薬絡みの罪を犯したんだ」と説明し、政権の強権的な麻薬犯罪対策の影響で受刑者が急増したとの見方を示した。
刑務官不足も深刻
フィリピンでは街中の売人から安価で麻薬が購入できる。仕事にあぶれた貧困層ほど麻薬に手を出し、現実逃避する傾向があるとされる。政府によると、ドゥテルテ氏が大統領に就任してから今年2月末までに約17万6000人の売人らが逮捕され、約5300人が裁判にもかけられず捜査当局に殺害された。
受刑者増加に伴い、刑務官不足も深刻化している。受刑者7人に対し刑務官1人が理想の配置で、ナボタス刑務所の場合は135人の刑務官が必要となる。しかし実際は46人だけで、監視の目が行き届いていないのが実情だ。
ペガラン氏は「出所後に生計を立てられるよう職業訓練もしたいが、スペース不足で難しい。更生が不十分になることが懸念だ」。別の刑務官は「更生できなければ受刑者はまた戻ってくる。塀の外と内をぐるぐる回るだけになり、何も改善しない」と嘆いた。(マニラ 共同)