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消費増税で岐路に立つ日本経済 アベノミクスで景気回復傾向を維持できるか

ニュースカテゴリ:政策・市況の国内

消費増税で岐路に立つ日本経済 アベノミクスで景気回復傾向を維持できるか

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消費税が8%に引き上げられた1日、イトーヨーカ堂は客足をつなぎとめるため「価格据え置き」を宣言した=東京都江東区  消費税の税率が1日、5%から8%に上がり、幅広い商品・サービスの価格も一斉に値上げされた。社会保障の財源確保のため実施された今回の増税だが、増税前の駆け込み購入で伸びていた消費が一気に冷え込む恐れがあるうえ、価格転嫁が円滑に進まなければ企業業績に影響する。アベノミクスによる景気回復傾向を維持できるか。日本経済は岐路に立った。

 スーパーや百貨店、量販店は1日、新しい値札に張り替えて営業を開始。一部で開店を遅らせるなどのトラブルはあったが、おおむね円滑だった。

 日本マクドナルドや吉野家などの外食チェーンも新料金に順次切り替えた。牛丼大手の吉野家は午前10時に価格を改定。有楽町店(東京都千代田区)では10時間際に入店した客には、旧価格で事前会計するよう店員が声をかけた。

 自動販売機の缶入り清涼飲料(350ミリリットル入り)の多くも120円から130円に価格が変更。鉄道は1日始発、タクシーは1日の出庫分から運賃に税率8%が適用された。

 安堵の初日

 今後の関心は、駆け込み需要に対する反動減の規模だ。

 1日に大手百貨店が発表した3月の既存店売上高(速報値)は、J.フロントリテイリングと高島屋が3割超のプラス。昨年3月の伊勢丹新宿本店の改装効果が一巡した三越伊勢丹も24%増だった。

 消費税が5%に引き上げられた1997年3月は全国百貨店の既存店売上高が23%増。今回は大手3社とも「予想を上回る伸び率」となった。

 流通各社は反動減の直撃を少しでも和らげようと対策に躍起となっている。イトーヨーカ堂が一部商品の税込み価格を4月以降も据え置くほか、イオンの一部店舗でも、客離れを食い止めようと、同日から「2万品目実質値下げ」と書かれたコーナーを設置した。

 こうした対策もあってか、イトーヨーカドー木場店(東京都江東区)では、正午時点での客数が前年同日比1%増。イトーヨーカ堂の青木繁忠常務執行役員は「いまは胸をなで下ろしている」と安堵(あんど)の表情を浮かべた。

 一方、大企業などが取引先に対して増税分の上乗せを拒む違法行為が増えることも懸念されており、政府は専門の調査官を大量に投入して監視を強化している。1日に同店を訪れた森雅子消費者行政担当相は、同社の亀井淳社長に「消費税の適正な転嫁をお願いしたい」と要請。亀井社長は適正に転嫁していると応じた。

 首相「生活に目配り」

 今回の増税後の一時的な景気の落ち込みは避けられないが、来年10月には税率10%への引き上げが予定されており、景気の腰折れを長引かせるわけにはいかない。

 安倍晋三首相は同日、官邸で記者団に対し「国民生活や暮らしに目配りしながら、必要な対応を行っていきたい」と述べ、5兆5000億円規模の経済対策を早期に実施する姿勢を改めて強調した。

 「4~6月の(経済)状況を注視しながら、最終的には7~9月の経済指標を見た上で(安倍首相が消費税率10%への引き上げを)判断する」。菅義偉官房長官は1日の会見で、消費税率10%引き上げは“既定路線”ではなく、4月以降の景気を慎重に見極めて判断する考えを改めて示した。

 ただ、もともと10%に引き上げても財源不足が避けられない中、予定通り増税できなければ財政は窮地に陥るだけに、難しいかじ取りが迫られる。

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