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【Bizクリニック】消費税増税の留意ポイント

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【Bizクリニック】消費税増税の留意ポイント

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六川祐介弁護士  □弁護士法人はるか 弁護士・六川祐介

 4月1日から消費税が5%から8%に増税される。これに伴い、いくつかの新設・変更となる制度があり、一方で新消費税率適用に関する経過措置も存在することから、これらに十分に留意する必要がある。

 とくに旧税率と新税率のどちらが適用されるかに関しては、そのルールをしっかりと理解していないと思わぬトラブルを招きかねない。たとえば、増税前の契約書に本体価格と消費税額を明確に区別せず、単に総額の価格表示しかない場合には、仮にその後に新税率が適用されることになったとしても、原則として契約書に記載された以上の金額を買い主・注文者らに対して請求することはできないと考えられており、売り主・受注者らが増額分を負担することになってしまう危険がある。

 このことを踏まえて、契約書には消費税額を明確に区別して記載するとともに、「消費税率が変更となった場合には変更後の税率にて消費税を請求する」旨の記載をしておく必要がある。また、前述の経過措置により新税率の施行後にも旧税率が適用されるケースがあり、顧客・消費者に説明を行い適切な契約書を作成するためには、理解しておかなければならない。

 消費税は、本来的に消費者が負担するもので、企業・事業者が負担すべきではない。したがって増税による負担の増加が適切に消費者に転嫁されるようにしなければならない。円滑な転嫁のための施策の一つとして「税抜き価格表示」(いわゆる「外税表示」)が昨年10月1日から2017年3月までの時限措置として再び認められた。ただし外税表示では、消費者に対して「現に表示する価格が税込み価格であると誤認されないための措置を講じている」という要件を満たす必要がある。

 具体的には表示価格が税抜きであることを明示したり、「+税」といった表示や税込価格を併記したりすることが求められる。反対に「増税分を値引きします」などと、あたかも転嫁をしていないかのような表示は禁止される。ほかにも広告表示にはかなり細かく指針が定められており、どのような表示・表現が禁止されるかを把握しておく必要がある。

 前回の3%から5%への消費税率引き上げの際にも問題となったが、増税による負担の増加を消費者へ転嫁することを嫌い、立場の弱い供給事業者や下請事業者らに負担を押し付けるようなことはあってはならない。不当な転嫁拒否行為は消費税転嫁対策特別措置法や独占禁止法、下請法などに違反し、違反者には行政指導や公表などのペナルティーがある。

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【プロフィル】六川祐介

 ろくがわ・ゆうすけ 上智大法卒。2011年弁護士登録(長野県弁護士会所属)、弁護士法人はるかに入所。借金・離婚・交通事故などの一般民事を広く扱うほか、最近では労働法務も多く取り扱う。30歳。

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