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インドネシア、繊維業が首都脱出模索 最低賃金上昇で人件費増大

ニュースカテゴリ:政策・市況の海外情勢

インドネシア、繊維業が首都脱出模索 最低賃金上昇で人件費増大

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 インドネシアで最低賃金の上昇が続き、上昇ペースが速い首都ジャカルタから工場を移転させようという動きが出始めている。インドネシア繊維業者協会(API)によると、繊維業60社がジャカルタ撤退を模索しているもようだ。現地紙ジャカルタ・グローブなどが報じた。

 同国の首都ジャカルタの最低賃金は現在、月220万ルピア(約1万8700円)。同国の最低賃金は州ごとに年に1度改定されるが、ジャカルタ特別州の今年の上昇率は44%だった。労働組合側は来年も50%の賃上げを目指している。

 API幹部は賃上げが繊維業各社の人件費を増大させて経営を圧迫しているとし、協会所属の60社がジャカルタから同じジャワ島内の西ジャワ州や中央ジャワ州への工場移転を検討していると明かした。

 移転検討先の今年の最低賃金は西ジャワ州が月85万ルピア、中央ジャワ州が同83万ルピアでジャカルタの半分以下。2州はともにインフラが比較的整っており、輸送費や生活費もジャカルタより安いとされる。

 同幹部によると、移転を検討しているのは従業員数が1000~2000人規模の中小企業が多い。こうした規模の企業であれば、100億ルピア程度とみられる費用をかけても移転を実行した方が、ジャカルタにとどまるよりも中長期的には利益になるという。APIはジャカルタ以外でも生産性に変わりはないとし、移転で地方への投資も進むと利点を強調する。

 これに対し、労働組合側は反発をあらわにしている。繊維業の労組幹部は「賃上げを要求するたびに生産性が上がらないのを労働者だけの責任にし、移転をちらつかせる」と業界側の姿勢を批判し、移転は「論外」だと訴えた。

 労使の間に立つ政府は8月末、「最低賃金の上昇率はインフレ率と同等であるべきだ」との勧告を出して投資家を安心させようとしたものの、労働組合の抗議活動が活発化しつつあり、12月末の賃金交渉の期限へ向けて首都ジャカルタの緊張は高まっている。

 インドネシアは世界12位の繊維・衣料製品輸出国。2012年の輸出額は、外需の低迷から125億ドル(約1兆2220億円)と11年比で10億ドル減少したが、今年は11年の水準まで回復するとみられている。(シンガポール支局)

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