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韓国ビール業界悩ます“爆弾酒” 日本製が大人気、北朝鮮にも味で敵わず?
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韓国ソウル市内にオープンしたアサヒビールの期間限定店「アサヒスーパードライ・エクストラコールド・バー」を訪れた同社の小路明善社長(左) 韓国のビール業界が、汚名返上に躍起だ。韓国の輸入ビール市場では日本製のシェアは33%と最大の輸出国となり、日本のビール大手が設置した期間限定店には、若者らが長蛇の列をつくる人気となっている。
背景には「水っぽく味が薄い」と評される現地のビールの味に対する不満がある。韓国のビール大手は危機感をバネに、新種のビールへの参入や原材料表示制度の変更などで巻き返しを図る。だが、焼酎をビールで割って飲む「爆弾酒」が主流を占める現状では、さまざまな改革も“看板倒れ”となりかねない。
高級デパートやブティックが集まるソウルの繁華街・江南区。8月9日にオープンしたアサヒビールの期間限定店「アサヒスーパードライ・エクストラコールド・バー」には、初日から長蛇の列ができた。レセプションに出席した同社の小路明善社長は「韓国市場で2ケタ成長を続け、シェア1位をキープしたい」とアピールした。
同様にキリンビールが江南区で今年6月に開設した期間限定店「キリン 一番搾り フローズンガーデン」は、わずか1カ月間で3万人の来場者があり、最長で90分待ちの列ができたという。7月末から釜山市内にオープンした2号店は、オープン期間を延長するなど日本製ビールの人気は高まるばかりだ。
韓国関税庁によると、日本製ビールの輸入額は今年1~6月で1322万ドル(約13億円)と2位のオランダ(約5億円)、3位のドイツ(約4億円)に大差をつけ、輸入ビール市場の3割を握ったという。
日本製ビールが人気を集める要因のひとつが、韓国ビールとの「味」の違いだ。
英経済誌エコノミストは昨年11月、「ビールの味は北朝鮮が韓国を上まわる」と韓国のビールを酷評する記事を掲載した。
当然、韓国国内では反発の声が上がったが、消費者からは「味が薄い」「炭酸はきついが味がない」など批判の声も少なくなかった。
ある業界関係者は「韓国の酒税法では、麦芽の使用比率が10%以上ならビールに分類される。麦芽使用比率が66・7%以上の日本のビールとは違い、発泡酒や第三のビールに近いものもある」という。
国内外の批判を踏まえ、韓国ビール市場で9割超を握るハイトジンロとOBビールの2社は、今秋から味わいや香りが強く欧州で人気の高い「エール」タイプのビールの発売を検討。また、麦芽の使用比率をラベルに表示するなどの対策を導入するという。
韓国野党からは、ビールの麦芽使用比率を日本並みの7割に引き上げる酒税法改正案も提出されており、業界や国を挙げて“汚名”返上を急いでいる。
だが、それでも韓国ビールの味が改善するかは不透明だ。韓国の宴会では焼酎やウイスキーをビールで割って飲む「爆弾酒」という飲み方が一般的だ。
「輸入ビールに比べて韓国ビールは3~5割安い。爆弾酒で飲むなら味も分からない」というように、味よりも価格を優先する消費者が大半を占める。
早く、安く酔えることを優先する“爆弾酒文化”が幅を効かせていては、汚名返上に向けた改革も“看板倒れ”となりそうだ。