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タイ、政情不安で成長鈍化懸念 各機関見通し下方修正
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タイで政情不安から消費者の消費マインドが悪化しており、経済成長が鈍化するとの懸念が広がっている。
タイ商工会議所大学によると、同国の7月の消費者信頼感指数(CCI)は前月比1.3ポイント低下の80.3となり、7カ月連続の低下となった。政情不安の高まりから政府が治安当局の権限を強化する国内安全保障法の発令に踏み切ったことなどを受け、消費者心理が暗転したのが要因だ。現地紙バンコク・ポストなどが報じた。
同大のCCIは経済見通しに関する全国での聞き取り調査を基に数値を算出。100を上回ると景気見通しの楽観、下回ると悲観を示す。
7月の調査では経済全般の見通しが70.6で前月比1.2ポイント低下、就業機会の見通しが72.4で同1.1ポイント低下、昇給見通しが97.9で同1.4ポイント低下と、各指標がそろって低下した。
同大は政情不安が長引けば経済に深刻な影響を与えかねないと警告している。調査担当者によると、同大は今年のタイの成長率を4.3%と予想している。
10~12月期まで政情不安が長引き、与野党両陣営の支持者の衝突という「最悪の事態」に陥れば消費の縮小だけでなく、観光や貿易なども打撃を受けると指摘。経済成長率は3.8%以下に落ち込む可能性があるとした。
このほかにもタイ中央銀行が今年の成長率予想を5.1%から4.2%に、財務省が4.5%から4%に修正するなど、各機関で同国の経済見通しを下方修正する動きが広がった。こうした動きを受け、同国政府は景気浮揚策の取りまとめに入った。
タイ財務省によると、浮揚策は、個人消費、民間投資、政府支出の増加と輸出振興の4項目からなる。
個人消費については減税による省エネ家電の販売促進、民間投資については観光・自動車・食品加工分野の優遇強化、政府支出については地方を中心とした財政出動などで増加を図る。
また、輸出振興については経済の不振が長引いている欧米や日本ではなく、経済が好調な東南アジア諸国連合(ASEAN)各国への輸出増を図る考えだ。
キティラット財務相は「政府の浮揚策で成長率にして1%の押し上げ効果が期待できる」と述べた。国民間の政治的な衝突を避け、減速気味の経済を立て直すことができるか、インラック首相の政権運営が問われている。(シンガポール支局)