可愛かったあの子が“大人”に成長して7年ぶりに凱旋帰国 ホンダ・シビック
7年ぶりに日本市場に復活したホンダ・シビック。10代目となる新型は、欧州の中型Cセグメントの競合に対抗すべく、横幅1.8メートルの大柄ボディーをまとって我々の前に姿を現した。エポックメイキングな初代や、学生時代にモダンな外観の3代目ワンダーシビックに憧れた者としては「これがあのシビックなのか」という戸惑いを覚えつつ、御殿場で行われたメディア向け試乗会でセダンとハッチバックに乗ってきた。(文と写真・小島純一)
「シビック」という名への違和感
初見は2015年に開催された前回の東京モーターショーだった。思えば新型に対しての私の違和感はここから始まっている。この立派なボディーを持つクルマがシビックを名乗っていることが腑に落ちなかった。あるいは昔のシビックを知らない若い世代は、新鮮な目で見られるのかもしれないが、私にはどうしてもコンパクトで、ちょっと洒落ていて、まさにCIVIC(=市民の)の名のとおり、庶民にも手の届く価格の大衆車というイメージが邪魔して、素直に評価できずにいた。
晴天の御殿場の試乗会会場で出迎えてくれたのは赤のセダンと青のハッチバック。前回のモーターショー以来の再会で最初に思ったのは意外にも「お、カッコいいじゃん」だった。広告や海外試乗記事で何度か目にしていたからだろうか、出会い以降感じていた違和感はこの再会の瞬間、すーっと消えていった。
スタイリッシュながら実用性高いセダン
試乗まではまだ2時間ほどある。写真を撮りながら、ためつすがめつセダンのボディーを一周した。横から見た伸びやかなシルエットは、ルーフからトランクまでを段差なくつないだ流行りの4ドアクーペで、なかなかスタイリッシュだ。欧州ではアウディ・A5やBMW・4シリーズ、ベンツのCLAなどで定番となったこのスタイルは、国産ではまだ少ない。強いて言えば“国民車”プリウスが挙げられるが、デザインだけで評価するならシビックセダンのほうがずっとカッコいい。
「このスタイルで中が狭くなければセダンもアリだな」。そう思って、まずは後席に乗り込んでみた。横幅はたっぷり、身長172センチの私が座って膝元にはこぶし2つ分、頭上にはこぶし1つ半の余裕がある。背もたれは肩まで届き、座面長も長いうえに足も十分伸ばせるため腿がしっかりサポートされる。後席のセンターアームレストが低いのは残念だったが、Cセグメントの後席としては、大人4人が快適に長距離移動できるトップレベルの居住性を持っている。期待以上の実用性に「セダン、いいじゃないか」とややテンション上がったところで前席へ。