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【安保法案特別委可決】きょうにも衆院通過 首相「国民を守る」 信念貫き採決

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【安保法案特別委可決】きょうにも衆院通過 首相「国民を守る」 信念貫き採決

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衆院平和安全法制特別委員会で民主党の長妻昭(あきら)代表代行(左手前)の質問に答える安倍晋三(しんぞう)首相(右)=2015年7月15日午前、国会・衆院第1委員室(酒巻俊介撮影)  集団的自衛権の限定的な行使容認を含む安全保障関連法案は15日、衆院平和安全法制特別委員会で採決が行われ、与党の賛成多数で可決された。採決時に維新の党、共産党は退席。民主党は離席したが、浜田靖一(やすかず)委員長を取り囲んだうえ、議場内でプラカードを掲げるなどして議事進行に抵抗した。法案は16日の衆院本会議に上程され、与党などの賛成多数で可決、参院に送付される見通しだ。

 可決を受け、安倍晋三首相は「国会審議はさらに続く。審議を含め、国民に丁寧に分かりやすく説明していきたい」と述べた。首相官邸で記者団に語った。採決に先立つ特別委の締めくくり総括質疑では「もはやどの国も一国のみで自国を守ることはできない。切れ目のない対応を可能とする法制が必要だ」と訴えた。「国民に十分な理解を得られていない」と認めたうえで、「批判に耳を傾けつつ、確固たる信念があれば政策を前に進めていく必要がある」と強調した。

 野党は「強行採決は到底認められない」(民主党の長妻昭(あきら)代表代行)などと批判し、質疑継続の動議を提出。与党側はこれを否決し法案の採決に踏み切った。また、特別委は、維新が単独で提出した対案を賛成少数で否決。民主と維新が共同提案した領域警備法案は採決が見送られた。

 この後、衆院議院運営委員会は理事会を開き、安保関連法案を採決する衆院本会議を16日午後に開催する日程を林幹雄委員長(自民党)の職権で決めた。民主、維新、共産、社民、生活の5野党は党首会談を国会内で開催し、法案の本会議採決に出席しないことを確認した。

 法案が16日に衆院通過すれば、参院送付後60日たっても採決されない場合、衆院の3分の2以上の賛成で再可決が可能となる憲法59条の「60日ルール」が適用できるため、9月27日に会期末を迎える今国会での成立が確実となる。

 ≪首相「国民を守る」 信念貫き採決≫

 安倍晋三首相が15日、国民に不人気で、野党やメディアの激しい批判にさらされている安全保障関連法案について、内閣支持率の下落も覚悟して衆院平和安全法制特別委員会での採決に踏み切ったのはなぜか。

 答えは、首相が特別委で語った次の言葉にある。

 「国民の声に耳を傾けながら、同時に国民の生命と幸せな生活を守り抜いていく責任を負っている。私たちの使命は何かを黙考しながら進めていく」

 支持率下落も覚悟

 首相は9日の講演で、祖父の岸信介(のぶすけ)元首相が1960年、安保関連法案よりはるかに大きな反対と緊張状態の中で日米安保条約改定を成し遂げた経緯に言及し、こう述べていた。

 「祖父は50年たてば理解されると言っていたが、25年、30年後には多数の支持を得られるようになった」

 確かに、世論調査で支持が高い政策にばかり取り組んでいれば国民受けはいいかもしれないが、それだけでは日本の安全は守ることなどできはしない。

 たとえ、その時点ではまだ「国民の十分な理解を得られていない」(首相)としても、政治家は「今そこにある危機」から目をそらしてはいけないというのが首相の信念なのだろう。

 現に中国は、国際的な非難をものともせずに南シナ海で7つの人工島をつくり、東シナ海でも日中中間線に沿って海洋プラットホーム建設を進めている。ここには軍事レーダーが配備される可能性があり、そうなると「中国の監視、警戒能力が向上し、自衛隊の活動が従来よりも把握される」(中谷元(なかたに・げん)防衛相)。

 北朝鮮は核・ミサイル開発を継続する一方で、国内情勢は混沌(こんとん)としている。

 「拙速」批判は的外れ

 一方、米国はそれまで世界で担ってきた安全保障上の役割を後退させる考えを表明している。日本としては、米国をはじめとする友好国との連携を深め、共同でさまざまな事態に対処するしかないのは自明だ。

 一連の審議をめぐっては、野党やメディアの一部からの「拙速」との批判も少なくなかった。ただ、それは彼らの方に決定的に問題意識と危機意識が足りないだけではないのか。

 16年前の1999年4月、当選2回の若手議員だった首相は、安保条約改定と集団的自衛権に関して国会でこんな質問をしている。

 「国会をめぐる情勢、国会の周りの状況は、39年前は十重二十重(とえはたえ)にデモ隊が取り囲んだ。この39年間の間に国民の意識は大きく変わってきたのだ」

 「当時の岸首相が『憲法を見ると、自衛隊が外国まで出かけていってその国を守るという典型的な例は禁止をしているが、集団的自衛権はそういうものだけではない。学説が一致をしているとは思わない。あいまいな点が残っている』と答弁している。首相自らが見解を、自分の責任を取る覚悟で述べている」

 首相は今になって急に、事を進めようとしたわけではない。(阿比留瑠比/SANKEI EXPRESS

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