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流行に流されないグルーヴを追求 WHITE ASH
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4人組バンド、ホワイト・アッシュ=2015年1月6日(提供写真) ここ数年で、季節を問わず大型の野外フェスティバルや多会場を使ってのライブサーキットなど、たくさんのバンドが登場するイベントが増えている。大きな会場の開放的でスケール感のある雰囲気と、アーティストのエネルギッシュに会場をあおるようなパフォーマンスが合わされば、非日常的な高揚感を楽しめる。最近では夏だけでなく、春、冬にも開催されているという状況だ。
そこに来るお客さんはというと、お目当てのアーティストを見に来た人と、なんとなく居合わせた人も同じようにステージを見ることになる。そうなると演者はライブパフォーマンスで引き付け、短時間で魅力を感じてもらえるように印象付けられるような楽曲を、昔に比べて意識するようになっているのではないかと感じている。
ロックバンドの曲の中でも、踊れる、スピード感のある曲が増えていて、「踊れるロック」のなかでも「4つ打ち(ダンスミュージックがベースになっているドラムのビート)ロック」がはやっているのは、そういったフェスの影響も大きいと思っている。大勢で盛り上がる会場を見るのは楽しいし、ステージ上から見る光景もまた特別なものだと聞く。一方で、フェスでお客さんが踊って盛り上がったかどうかだけでバンドの良しあしを判断することに疑問を感じているアーティストもいる。
WHITE ASHのニューアルバムは、シーンの流行から一線を画す、クールでダークな、そしてミディアムテンポ曲の印象が強い作品に仕上がっている。
アルバムは1曲目から古いヒップホップのような重厚なイントロのビートが特徴的な「Orpheus」で始まる。さらにライブでも盛り上がりそうな曲もあるが、高揚感はありつつもお祭り騒ぎではないクールな雰囲気がしっかりと残る。ソングライターであるのび太は「周りとか関係なく、自分が今本当にかっこいいと思うものを作りたいと思っていました」と語る。
今作はレコーディング時にバンドでセッションをして録音するのではなく、楽器ごとに慎重に音を吟味して録音して作り上げていったという。確かにライブで演奏しているシーンがパッと思い浮かぶよりも、細部にまでこだわった独特の音世界や腰の据わったグルーヴをじっくりと感じたいと思うような曲が印象に残る。
独自の音楽的スタンスとセンスが、「THE DARK BLACK GROOVE」となって完成した。(音楽評論家 藤田琢己/SANKEI EXPRESS)