SankeiBiz for mobile

産経前ソウル支局長を在宅起訴 韓国地検、名誉毀損で

ニュースカテゴリ:EX CONTENTSの国際

産経前ソウル支局長を在宅起訴 韓国地検、名誉毀損で

更新

ソウル中央地方検察庁=2014年10月5日、韓国・首都ソウル(桐山弘太撮影)  産経新聞の加藤達也前ソウル支局長(48)が書いた朴槿恵(パク・クネ)韓国大統領(62)に関するコラムをめぐる問題で、ソウル中央地検は8日、加藤前支局長を「情報通信網利用促進および情報保護などに関する法律」(情報通信網法)における名誉毀損(きそん)で在宅起訴した。

 加藤前支局長は8月18日から3回にわたり地検に出頭。地検は情報通信網法違反の疑いで、地検側の通訳を介し、記事作成経緯などについて聴取した。

 加藤前支局長は「朴槿恵政権を揺るがした(4月16日の)韓国旅客船の沈没事故当日、朴大統領がどこでどう対処したかを伝えるのは、公益にかなうニュースだと考えた」と説明した。

 産経新聞はウェブサイト「MSN産経ニュース」に8月3日、「【追跡~ソウル発】朴槿恵大統領が旅客船沈没当日、行方不明に…誰と会っていた?」と題した加藤前支局長のコラムを掲載した。韓国国会での議論や韓国大手紙、朝鮮日報のコラムなど公開されている情報を中心に書かれた。

 今回の問題をめぐっては、報道の自由が侵害されることを懸念する声が国内外の多くの報道機関や関係団体からあがっていた。日本新聞協会編集委員会は「報道機関の取材・報道活動の自由、表現の自由が脅かされることを強く懸念する」との内容の談話を発表。国際ジャーナリスト組織、国境なき記者団(本部パリ)も、韓国側に加藤前支局長を起訴しないよう求める声明を発表していた。(ソウル 藤本欣也/SANKEI EXPRESS

 ≪強権発動 異例の事態≫

 韓国の検察当局が、産経新聞の加藤達也前ソウル支局長を事情聴取の末、起訴した。韓国の国内法をもとに海外の報道について捜査し、国際社会の懸念の声を無視する形で“強権発動”に踏み切った極めて異例の事態だ。民主国家を自任する韓国ではあるが、言論の自由が脅かされている。

 今回の問題は、加藤前支局長が書いたコラムが「朴槿恵(パク・クネ)大統領の名誉を毀損(きそん)した」とする韓国の市民団体の告発から始まった。このコラムは、韓国大手紙、朝鮮日報が先に掲載したコラムなどを引用したものだが、検察側は朝鮮日報の記者を出頭させた上での事情聴取には踏み切っていない。国内と海外のメディアへの異なった対処に疑問の声が多い。

 さらに日本の報道機関が日本に向けて日本語で伝えたものに、韓国の国内法を適用したことも問題視されている。韓国では加藤前支局長への出頭要請の時点から「強引ではないか」「やり過ぎだ」などと、海外メディアに「法」を振りかざす当局の姿勢を懸念する見方があった。国際社会で尊重されている言論の自由に対する侵害が、外交問題や国際問題に発展することへの懸念も一部にはあった。

 韓国紙、京郷新聞は「(メディアの報道に)大統領と政府が訴訟で応じれば、国家権力に対する正当な監視活動を萎縮させる」との学者の見方を紹介。ハンギョレ紙も社説で「名誉毀損などを理由に捜査と処罰のメスを入れ始めれば、全ての言論機関が公職者への辛辣(しんらつ)な批判を敬遠し、言論の自由が萎縮することに全世界が懸念を示すだろう」と警告している。これらの指摘通り、今回の措置は、韓国内外の区別なくメディアの報道活動を甚だしく脅かすものだ。(ソウル 名村隆寛/SANKEI EXPRESS

 ≪強く抗議、速やかな撤回求める 熊坂隆光・産経新聞社代表取締役社長の声明≫

 産経新聞は、加藤達也前ソウル支局長がソウル中央地方検察庁により、情報通信網法における名誉毀損(きそん)で起訴されたことに対し、強く抗議するとともに、速やかな処分の撤回を求める。韓国はもとより、日本はじめ民主主義国家各国が憲法で保障している言論の自由に対する重大かつ明白な侵害である。

 産経新聞のウェブサイトに掲載された当該コラムに韓国大統領を誹謗(ひぼう)中傷する意図はまったくない。内容は韓国旅客船セウォル号沈没事故当日、7時間所在が明確ではなかった朴槿恵(パク・クネ)大統領の動静をめぐる韓国国内の動きを日本の読者に向けて伝えたものである。これは公益に適(かな)うものであり、公人である大統領に対する論評として報道の自由、表現の自由の範囲内である。ところが、検察当局の取り調べの過程では、明らかに表現の自由を侵害する質問が繰り返された。しかも、加藤前支局長は60日に及ぶ出国禁止措置で行動、自由を束縛された上での本日の起訴である。

 そもそも、日本の報道機関が日本の読者に向けて、日本語で執筆した記事を韓国が国内法で処罰することが許されるのかという疑問を禁じ得ない。

 日本新聞協会をはじめ、ソウル外信記者クラブ、日本外国特派員協会、国境なき記者団といった内外の多くの報道機関、団体が強い懸念などを表明し、国連や日本政府も事態を注視する中で今回の検察判断は下された。これは、自由と民主主義を掲げる韓国の国際社会における信用を失墜させる行為である。報道の自由、表現の自由が保障されてはじめて、自由で健全な議論がたたかわされ民主主義は鍛えられる。韓国当局が一刻も早く民主主義国家の大原則に立ち返ることを強く求める。

 今後も産経新聞は決して屈することなく、「民主主義と自由のためにたたかう」という産経信条に立脚した報道を続けていく。(SANKEI EXPRESS

ランキング