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座礁の豪華客船 解体へ「最後の航海」 イタリア 事故から2年半、撤去費用2070億円

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座礁の豪華客船 解体へ「最後の航海」 イタリア 事故から2年半、撤去費用2070億円

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イタリア・トスカーナ州沖合のジリオ島付近=2012年1月13日午後9時半ごろ  2012年1月にイタリア中部ジリオ島沖で座礁し、32人の死者を出したイタリアの豪華客船「コスタ・コンコルディア号」が7月23日、イタリア北部ジェノバの解体施設に向け「最後の航海」に出発した。全長290メートル、重さ11万4000トンの巨大な船体を「ケーソン(浮き箱)」によって水に浮かび上がらせる作業が完了し、作業船による曳航が可能となったためだ。欧米メディアが23日、一斉に伝えた。

 脱出の船長は公判中

 「コスタ・コンコルディア号」は地中海西部を航路とするクルーズ船として06年に竣工(しゅんこう)した。しかし、イタリアのチビタベッキア港を出港してサヴォナ港へ向かう途中の12年1月13日夜(現地時間)、ジリオ島付近の浅瀬に乗り上げて座礁。その後、損傷した船底から浸水し、横倒しとなった。

 船はチビタベッキア(イタリア)→サヴォナ(イタリア)→マルセイユ(フランス)→バルセロナ(スペイン)→パルマ・デ・マヨルカ(スペイン)→カリアリ(イタリア)→パレルモ(イタリア)を7日間かけてめぐる予定で、事故が発生したのは出航日の夕食時だった。

 事故が起こった12年はタイタニック号の沈没事故(1912年4月)からちょうど100年目に当たる。座礁当時、船のレストランでは映画「タイタニック」の主題歌がBGMとして流れていたことも後に乗客の証言で明らかになった。

 事故当時、船長はワイン片手に女性と食事中だったことも判明。乗客乗員を置き去りにして船外に脱出し、沿岸警備隊の「船に戻れ」との指示にも従わなかった。現在、過失致死罪などで公判中だが、昨年(2013年)10月には愛人と騒がれた女性が切符を持たずに船に乗り込んだことなどを証言している。

 船には乗客乗員約4200人が乗り合わせていたが、32人が死亡。日本人は団体旅行などで43人が乗船していたが、全員無事だった。

 ジェノバまで曳航

 島の沖合に横たわった船体を引き起こす作業は事故から1年8カ月たった13年9月に始まった。まず船体を引き起こした後曳航するまでの間、船体を支えておく土台が海中に築かれ、海面上に出ている船の左舷側の側面に、船を曳航する際に“浮き箱”として使う金属製のタンクが取り付けられた。

 引き起こし作業は、金属タンクの頂上から海中の土台まで繋いだ金属ワイヤを慎重に引いていき、船体を少しずつ海面に立ち上げていく方法を取った。この時点でタンク内は海水で満たされていたため、船体を起こすほど、その重みが作業を助ける形となり、船はおよそ19時間で海中の土台の上に水平に立ち上がった。

 その後、船の右舷側にも同じ金属タンクを取り付け、両側のタンクに空気を注入して船を浮かせる作業が今年7月20日に完了。フランス通信(AFP)などによると、船はジェノバ港まで4日間かけて曳航され、解体作業に入るという。

 史上最大の規模

 客室数1500、レストラン5カ所、バー13カ所、劇場、ダンスホール、ディスコ、いくつものプールを備えた「コスタ・コンコルディア号」の建造費は約4億5000万ユーロ。一連の撤去作業費用は約15億ユーロ(約2070億円)に上る見込みで、客船の解体作業としては史上最大規模になる。(SANKEI EXPRESS

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