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朴槿恵大統領の涙に韓国賛否両論 「政治的効果満点」といった指摘も

 韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領(62)は5月19日、旅客船セウォル号沈没事故で国民向け談話を発表した際、犠牲となった高校生や教員、乗組員ら10人の名前を読み上げながら涙を流した。この涙について、韓国メディアでは賛否両論の声が挙がっている。

 「政治的」「誠実さ感じる」

 韓国では、朴大統領は大抵のことでは涙を流さない人という認識を持たれている。沈没事故後も決して涙を流さなかったことから、「子供を育てたことがないから」「感情が枯れた氷の女王だから」などと中傷されていた。

 逆に今回流した涙については、6月4日投票の「統一地方選」を前にした微妙な時期のため、「政治的効果満点の涙を使っただけ」といった指摘も出ている。

 保守系韓国紙、朝鮮日報(電子版)は5月20日のコラムで、「歴代の大統領も、よく泣いた。候補時代には『涙の政治』という声まで聞かれた」といった過去の大統領の例を挙げた後、「朴大統領の涙は、よく見られる政治的な涙ではなかった。国を惨事に追いやった不条理を正したいという願いもこもっているのだろう」と擁護している。

 韓国主要紙、中央日報(電子版)は5月20日の社説で、「これまでに少なくない人々が、朴大統領のさまざまな行政的措置よりも国民のつらくて腹立たしいわだかまりを正面から包容できない問題に疑問を提起してきた」とした上で、「大統領は談話文を謝罪で始めて、涙で終えた」「大統領の謝罪の誠実さが感じられる」と肯定的に捉えている。

 泣かない方がすごい

 保守系韓国紙、東亜日報(電子版)は5月20日のオピニオン面で、「盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領は公の席でよく泣いた。感情移入するのはいいが、指導者は感情と距離を置くことができなければならない。李明博(イ・ミョンバク)大統領は、哨戒艦撃沈事件の犠牲者の告別式で涙を見せた。国軍の統帥権者の威厳ある振る舞いではなかった」と国の指導者の涙に手厳しい。

 朴槿恵大統領が客船沈没後、多くの子供たちが犠牲になり、いたたまれない思いを抱きながらも涙を見せなかったことに「大統領が、それも女性大統領が公の席で泣かないことの方がすごいと感じた」と評価した。

 そんな中、国民談話で見せた涙については「大統領は涙を流す人ではなく、涙を拭く人でなければならない」と苦言を呈した。

 韓国の主要経済紙、毎日経済新聞(電子版)は5月20日の社説で、「国民皆がこの間、悲痛感、無力感、罪悪感がない交ぜになったトラウマに苦しんだ。朴大統領も犠牲者の名前を呼み上げ、涙を堪えることができなかった。今回のことは決して忘れてはいけない惨事だ」と淡々と論じている。

 「苦々しい高評価」

 一方、左派系韓国紙、ハンギョレ(電子版)は5月19日の社説で「これまでの“涙もない”に対する批判の世論を反映したものかもしれないが、涙を流したことはひとまず評価しよう。国民の涙が枯れた状況になって出てきた大統領の“遅刻の涙”が話題になり、涙の“希少価値”が高く評価されている現実はなぜか苦々しいばかりだ」と皮肉った。

 ハンギョレのベテラン記者は5月19日のコラムで、大統領府が「海洋警察を批判するな」と韓国放送公社(KBS)の報道に圧力をかけたとされる問題を挙げながら、「談話でも宣言でも、一歩遅れて涙を流そうがしまいが、(大統領がミサに出席した明洞)聖堂で『私のせいです』と胸を打とうがしまいが、このような大統領府と権力構造の中で成り立つのは、すべて偽物に成らざるを得ない」「韓服や洋装ファッションで無能と無知を隠すことはできず、出処の分からない涙とジェスチャーで誤りを覆い隠すことはできない」と、朴大統領を卑下した。(国際アナリスト EX/SANKEI EXPRESS

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