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露とのハイレベル対話継続を

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露とのハイレベル対話継続を

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 【佐藤優の地球を斬る】

 日露両国外務省は4月17日に、今月末に予定されていた岸田文雄外相の訪露が延期されると発表した。ウクライナ情勢が緊迫する中で、米国がロシアに対する圧力を強める中で、日本も共同歩調をとったのであろう。

 ウクライナ問題に関して、日本、米国、EU(欧州連合)などがロシアに対する圧力を強めると、ロシアが中国に接近する可能性がある。ロシアにとってクリミア併合は、ウクライナに取られた失地の回復である。この例にならって、中国が日本によって「奪取」されたと一方的に主張している尖閣諸島の失地回復を試みる危険がある。このシナリオを阻止することが日本外交の最重要課題だ。

 プーチン大統領は17日、モスクワで「大統領との直接対話(直通ライン)」と題する国民からの質問に直接答える会見を行った。その中での中露関係の発言について、この日、露国営ラジオ「ロシアの声」は、こう報じた。

 <「直通ライン」でプーチン大統領は、ロシアと中国の関係は信頼感に満ちたものであり、かつて見られなかった高いレベルにある、と述べた。

 「モスクワは今後も北京との関係を発展させていく。2国間協力の枠組みで、また国際社会の中で。

 露中関係は21世紀の国際政治における中核的ファクターとなる。ただロシアは中国と軍事同盟を結ぶことは考えていない。

 中国との軍事政治同盟の形成など問題にしていない。世界をブロックに分けるというシステム自体が遠い過去のものになっていると思う」

 プーチン大統領は以上のように語った>(http://japanese.ruvr.ru/news/2014_04_17/271318184/

 ここで重要なのは、プーチン大統領が「中国との軍事政治同盟の形成など問題にしていない」と明示的に述べたことだ。ロシアは軍事のみならず政治においても、中国と枢軸を形成することを意図していない。プーチン大統領は、ロシアも中国も帝国主義国なので、適宜取引をしながら、それぞれの国益の極大化を図っていくことを考えているのである。

 少し前になるが、3月22日に露国営イタルタス通信社の「ロシアと中国は重要な戦略的・歴史的パートナーである。両国の発展にとってのみならず、現在の国際関係ならびに世界経済システム全体にとって、こうしたパートナーシップの意義はどこにあるとみているか?」という質問に対して、プーチン大統領はこう答えた。

 <ロシアと中国は、ともに国際社会における影響力のあるメンバーであり、国連安保理常任理事国であり、世界有数の経済大国である。であるから、我々の間に横たわっている戦略的パートナーシップは、2国間のものとしても、グローバル規模のものとしても、大きな意義を有している。(中略)

 世界の安定化にとっての根本的な問題群や喫緊の国際問題に対し、我々両国が共通のアプローチをとることが、世界経済に安定をもたらす重要なファクターとなる。露中は、中東・北アフリカ情勢、朝鮮半島の核問題、イランの核開発プログラムをめぐる情勢など、極めて先鋭的な問題の解決への、客観的でプラグマティックなアプローチの模範を示す>(http://japanese.ruvr.ru/2013_03_22/108630040/

 中露の戦略的パートナーシップは、同盟関係ではなく、プラグマティックなアプローチで、個々の懸案を処理していくというのがロシアの基本方針だ。このあたりの事情を正確に分析した上で、日本はロシアとプラグマティックな対話を高いレベルで継続していくことが必要だ。

 5月25日のウクライナ大統領選挙終了後の然るべき時期に岸田外相が訪露し、ロシアとの外相レベルでの対話を継続することが重要になる。(作家、元外務省主任分析官 佐藤優(まさる)/SANKEI EXPRESS

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