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【ソチ五輪】閉鎖都市 歯磨き粉も警戒 異様な厳戒 競技スタート

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【ソチ五輪】閉鎖都市 歯磨き粉も警戒 異様な厳戒 競技スタート

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ソチ冬季五輪の開会式に先立って競技が始まった、新種目のスノーボード・スロープスタイル男子予選で高く舞う角野友基(かどの・ゆうき)選手。コースにはロシア名物のマトリョーシカ人形が障害物として設置された=2014年2月6日、ロシア・ソチ(古厩正樹撮影)  ソチ冬季五輪は2月7日午後8時14分(日本時間8日午前1時14分)開始の開会式に先立ち、6日に競技が始まったが、今回の五輪はテロの脅威と隣り合わせ、スポーツの祭典とは思えない異様な厳戒態勢が敷かれた“閉鎖都市”での大会となる。テロの標的になりやすい「ソフトターゲット」と言われる公共交通機関の主要施設では、厳重な身体検査や持ち物検査が実施され、華やかな祭典に水を差す事態に。また、米国土安全保障省は(2月)5日、ロシアへの直行便を運航する米国や海外の航空会社に対し、テロリストが歯磨き粉のチューブに爆発物を詰めて運ぶ可能性があるとして、警戒を呼び掛けた。

 「肌着1枚まで」

 ソチ臨海部のメーンメディアセンター近くにある高速鉄道駅。入り口にはセキュリティーゲートが設けられており、金属探知機やX線装置がずらりと並ぶ。検査の実態はモスクワの空港入り口よりも厳しく、たとえ金属探知機で無反応でも担当者が両腕から上半身、両足までくまなくさわり、危険物が入っていないかを調べる。女性でも靴の中まで検査の対象となる。

 持ち物検査でも、パソコンやカメラは電源をオンにして市販の製品であることの証明を求められる。30代の日本人男性は「肌着1枚になるまで衣服を脱げと要求された」と困惑顔だ。

 路線バスでも選手村などの主要施設に近づくと、1度、乗客全員が降りることを要求され、車内の安全チェックを受ける。こうした状況は移動で大幅な時間のロスを強いられることにつながり、競技スケジュールが本格化すれば、今後、観客らからの苦情が当局に殺到する恐れもある。

 「無力化」で対処

 だが、ロシア政府にとって観客の利便性など二の次だ。大会中の各競技会場のチケットは平均すると約3割が売れ残っているとされるが、採算などもはやウラジーミル・プーチン露大統領(61)の眼中にはない。ソチ五輪の開催費用は夏冬を通じて五輪史上最高、文字通りケタ違いの500億ドル(約5兆円)に達するとみられており、想定外の大出費を強いられたロシア政府にとってはテロを阻止することこそが最優先課題だからだ。

 ソチに設置されたテロ対策など治安機関の拠点に詰める当局者は「部屋には自爆テロを起こす可能性がある指名手配者の顔写真が何枚も貼られている。彼らを“無力化”するたびに写真にバツ印を付けるが、すぐに新たな顔が増える」と共同通信に明かした。「無力化」とは殺害を意味する内部用語だ。ソチ五輪では約4万人の治安部隊員が動員されているが、当局者は「武装勢力や潜在的な自爆テロ犯に対しては、拘束ではなく最初から無力化で対処するしかない」と語った。

 航空会社に通達

 一方、米メディアによると、米国土安全保障省当局者は「米国を標的とした具体的なテロ計画などが発覚したわけではないが、『信頼できる筋』からの情報によって、機内に持ち込まれる練り歯磨きや化粧品のチューブに爆発物が仕込まれる可能性があることが分かった」として警鐘を発した。ソチ五輪のテロ情報をめぐっては、米国家テロ対策センターのマシュー・オルセン所長(51)が(2月)4日の下院情報特別委員会で「具体的な脅威の情報が複数ある」と証言。五輪会場より、ソチ周辺の方が危険だとの見方も示している。

 プーチン大統領は(2月)5日、ソチで内外の記者団に対し、テロの懸念について「世界各国が最も積極的な形でロシアに協力している」と述べ、治安対策は万全との認識を示した。ロシアの対外的な信用が問われる大会が幕を開けた。(SANKEI EXPRESS (動画))

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