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僕はまだベストな仕事をしていない レオナルド・ディカプリオさんインタビュー

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僕はまだベストな仕事をしていない レオナルド・ディカプリオさんインタビュー

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落ち着いた口調と余裕たっぷりの物腰に、俳優として数々のキャリアを積んできたレオナルド・ディカプリオの自信がうかがえた=2014年1月29日午後、東京都港区(鴨川一也撮影)  □映画「ウルフ・オブ・ウォールストリート」

 ≪人間の暗部、その危険性に警鐘を鳴らす≫

 大スターの名こそ欲しいままにしているが、レオナルド・ディカプリオ(39)は、意外にも米アカデミー賞主演男優賞を一度も手にしていない。新作「ウルフ・オブ・ウォールストリート」(マーティン・スコセッシ監督)で3度目のチャンスを得た主演男優賞について、どんな思いでいるのだろう。ノミネートされなくても、毎年のようにアカデミー賞をにぎわす作品に出演を続けるディカプリオにすれば、主演男優賞は何が何でも欲しい最高の栄誉なのではないのか? 来日会見を行った1月29日、SANKEI EXPRESSのインタビューに応じたディカプリオからは、拍子抜けしそうなほどよそ行きのお行儀のいい答えが返ってきた。「僕がアカデミー賞にノミネートされたことは、もちろん誇りに思いますよ。アカデミーの皆さんがこの作品が問いかけるものを評価してくれたのですから」

 常に「最高のものを」

 さらに作品の概要をうれしそうに説明し始めたディカプリオの顔を見ながら、残念に思ってペンを置こうとしたとき、ふと思い出したかのように次々とあふれ出した彼の言葉に目を見張った。「僕は15歳のときからずっと俳優の仕事に臨む態度はまったく変わっていません。15歳のときと同じテイストを今でも持っています。次々とクラシックな名作映画を見まくり始めたのもこの歳からです。ある映画でロバート・デ・ニーロと共演することになったとき、最高のものを作らねばと1年間、自宅で映画ばかり見ている生活をしたことがあります。映画業界に君臨する巨人とされる人たち、英雄たち以上の仕事を自分もしよう。そういう姿勢を大切にやってきたんです。だから、僕は出演した作品の出来栄えに満足していないし、まだベストな仕事はしていないと思っています」

 7年かけて完成

 ディカプリオは根っからのアーティストなのだ。ちょっとやそっとのことではめげない、タフな男で、アカデミー賞受賞の有無など、彼にすれば些末(さまつ)な話。そんな一途な男がプロデューサーとしても参加し、7年の歳月をかけて完成させたのがコメディータッチに描かれた本作だ。主人公は金もコネも学歴もない冴えない男だが、ディカプリオに負けず劣らずのタフさと巧みな話術を武器に、年収49億円へと華麗に人生をステップアップしていったウォール街の実在の株式ブローカー。

 ジョーダン・ベルフォート(ディカプリオ)は、念願の株式ブローカーになったその日に株価暴落の「ブラックマンデー」に遭遇し職を失う。その後、同じアパートに住むドニー(ジョナ・ヒル)をパートナーに証券会社を設立し、筋の良くない株を売りまくると、会社はどんどん成長。だが、ベルフォートの生活は派手になり、酒を浴びるように飲んでは、ドラッグにふける毎日。会社に公然と売春婦を呼んで、社員たちと大騒ぎするなどやりたい放題。やがて国際的な金融犯罪に手を染めていく。

 スコセッシ監督を尊敬

 ディカプリオが「アーティスト」として本作の制作で心がけたのは「人間の暗部を描き、世の中にその危険性について警鐘を鳴らすこと」だった。巨額の富を手にした人間があらゆる誘惑に負けてしまい、ある意味、原始人のように行動した結果、すべてを消費しつくしてしまう-。ディカプリオはそんな人間の本質を伝えたかったそうで、「作品自体は社会と人間に対するコメントなんですよ」と強調した。

 2002年「ギャング・オブ・ニューヨーク」以来、5度目のタッグを組んだスコセッシ監督は、ディカプリオにとっては映画人として自分を育んでくれた特別な人らしい。「スコセッシは1番尊敬する人。その後、ずっと距離をあけて2番、3番がいました。スコセッシの素晴らしさは、人間の暗部を描くこと。それも教訓めいた語り口ではないところがいいんですよ。もしくは登場人物について何らかの判断を作品の中で加えないことなんです。ユーモアのセンスもいい。言ってみれば、彼の作品には、キャラクターの存在自体がそのまま自然とストーリーになっていく感覚があるんです」。本作の監督選びでは「スコセッシ監督しかいない」と考え、ディカプリオは彼のスケジュールが空くまで3~4年待ったと明かした。

 かつてフォーブス誌で「エンターテインメント業界でもっとも稼ぐ男」年収の8位に選ばれたこともあるディカプリオ。お金との付き合い方については、ストイックだ。環境保護へ多額の金を還元させてきた自身のライフワークを念頭に、「主人公のモデルが現在、必死にやっていることを僕もやっているんですよ。彼は社会に対する責任を明確にし、大勢の被害者にお金を返済しています。また、セミナーを開き、自分が繰り返した悪行のあらましを詳しく説明もしています」。本作の後、“充電期間”を設けているディカプリオだが、「近々、環境問題のドキュメンタリー映画を作りたい」と考え、構想を練っているそうだ。1月31日、全国公開。(文:高橋天地(たかくに)/撮影:鴨川一也/SANKEI EXPRESS

 ■Leonardo DiCaprio 1974年11月11日、米ロサンゼルス生まれ。主な出演作は、93年「ギルバート・グレイプ」(米アカデミー賞助演男優賞ノミネート)、96年「ロミオ&ジュリエット」(ベルリン国際映画祭最優秀男優賞受賞)、97年「タイタニック」など。2004年「アビエイター」、06年「ブラッド・ダイヤモンド」、13年「ウルフ・オブ・ウォールストリート」は、いずれも米アカデミー賞主演男優賞にノミネートされた。

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