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「バスケ外交」北朝鮮に軍配 ロッドマン氏が3回目の訪朝、米は利用できず

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「バスケ外交」北朝鮮に軍配 ロッドマン氏が3回目の訪朝、米は利用できず

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 米プロバスケットボールNBAの元スター選手、デニス・ロッドマン氏(52)が展開する対北朝鮮「バスケ外交」に批判の声が上がっている。ロッドマン氏は現在、今年3回目の訪朝中で、北朝鮮代表チームの指導などに当たっているが、張(チャン)成沢(ソンテク)元国防副委員長の処刑後も金(キム)正恩(ジョンウン)第1書記(30)の体制が「平常」であることを宣伝するために利用されているとの指摘が米国では専らだ。かつて、激しいプレースタイルから「狂気のリバウンド王」とも称されたロッドマン氏は「バスケをして楽しみたいだけ」と政治目的を否定するが、こと北朝鮮が相手ではスポーツと政治は別とも言っていられないのは世界の常識だ。

 両首脳とも愛好

 ロッドマン氏は今回、19日に経由地の中国・北京から北朝鮮・平壌に到着し、23日まで滞在する予定という。今年は2月から3月にかけてと、9月にも訪朝しており、金第1書記を「生涯の友」と呼び、関係を深めている。来年1月にもロッドマン氏は訪朝を計画しており、1月8日の金第1書記の誕生日に合わせて、平壌でロッドマン氏が編成する元NBA選手たちによる米国チームと北朝鮮代表チームとの親善試合を企画している。

 19日に北京空港で記者団に囲まれたロッドマン氏は「世界中の人たちにとって、スポーツはとても大切なものだ。親善試合は米国の人々、特にオバマ大統領の関心を引けるのではないかと期待している」と述べた。さらに張氏が処刑された直後であることを問われると、「これは私とは関係のないこと。張氏が何をしようが、私がどうにかできるわけではない」と答えた。

 金第1書記には、スポーツ、中でもとりわけバスケットボールとサッカーを、対米、対韓外交のカードにしようとの思惑があるとされる。外務省をバスケットボールの、対韓工作を進める党統一戦線部をサッカーの後援機関にそれぞれ指定し、党や政府の各部署にこの2競技を支援するよう命じているのもその表れだ。サッカーは南北ともに一番人気のあるスポーツである。

 一方、バスケットボールは言わずと知れた米国の人気スポーツで、金第1書記が子供時代から最も好んだ競技であるとともに、バラク・オバマ米大統領(52)も熱烈なバスケ愛好家として知られる。

 北朝鮮がロッドマン氏に“白羽の矢”を立てたのは、オバマ氏が1990年代後半にロッドマン氏が所属していた「シカゴ・ブルズ」の大ファンであることが理由とも指摘されている。

 世論は冷ややか

 だが、「北通い」を続けるロッドマン氏に対する米世論は冷ややかだ。ブッシュ前政権の高官でジョージタウン大のビクター・チャ教授は20日のCNNテレビの番組で、「ロッドマン氏とセットなら金正恩氏は西側メディアから破格の注目を集めることができ、体制が揺らいでいないことを効果的に宣伝できる。さらに強硬路線転換への批判を回避し、米国などの融和策を引き出そうという金正恩政権の思いもちらつき、ロッドマン氏は利用されている」と分析した。

 また、19日付の有力紙ワシントン・ポストは、北朝鮮の政治犯収容所で生まれて22歳のころに脱出した申(シン)東赫(ドンヒョク)氏(31)の投稿を掲載。申氏は「独裁者との時間を楽しむときに、ロッドマン氏は彼やその一家がやってきたことに思いをはせてほしい。極端な残忍さだけがその特徴だ」と訴えた。

 「バスケ外交」は、ウマがあうロッドマン氏と金第1書記の「二人よがり」なのか。

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