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“プーチン通信”に世界から批判の声 イメージアップ狙うも逆効果

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“プーチン通信”に世界から批判の声 イメージアップ狙うも逆効果

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 反同性愛の著名キャスター起用

 ロシアのウラジーミル・プーチン大統領(61)が、また強権を発動した。国営メディアを再編し新たな巨大通信社を立ち上げ、その社長に同性愛者への暴言を連発する有名ニュースキャスターを起用すると発表したもの。プロパガンダ(政治宣伝)と情報統制の強化が狙いとみられる。同性愛宣伝禁止法や反政権活動の弾圧などが世界中から顰蹙(ひんしゅく)を買うなかでの暴挙に、欧米メディアだけでなく、再編対象となった国営メディア内部からも批判の声が上がっている。

 国営メディア再編

 「多数の言語と、利用可能な最高のテクノロジーを使い、可能な限り多くの人々と交流して真実を伝えなければならない」

 ロシア大統領府のセルゲイ・イワノフ長官(60)は12月9日、国営メディア再編の大統領令を発表し、その狙いをこう説明した。

 発表によると、最大の国営通信社「RIAノーボスチ」と31カ国語放送のラジオ局「ロシアの声」を統合し、国際通信社「今日のロシア」を設立。1カ月後の発足を目指すという。

 ロシアには、同じ国営のタス通信もあり、大統領令は「メディアの効率向上」と説明している。新会社は特にインターネットを通じた外国語による海外への情報発信を担う。

 「政府の代弁者」

 プーチン氏としてはロシアのイメージアップを狙っているようだが、まったくの逆効果。なかでも大顰蹙なのが、社長に起用されるドミトリー・キセリョフ氏だ。

 国営テレビで毎週日曜日に放送されているニュースショーのキャスターを務めているが、反同性愛でも有名。「同性愛者の血液や精子の提供は(法で)禁じるべきだ」「彼らが交通事故で亡くなっても、内臓は移植に使わず、埋めるか、焼却すべきだ」などと、暴言を連発している。

 「米国との冷戦は終わっているのではなく激化している」といった反米発言のほか、野党勢力をこき下ろす発言でもたびたび物議を醸し、「政府の代弁者」といわれている。

 「最初、このニュースを聞いたとき、冗談だと思ったが本当だった」。反体制のカリスマ指導者で、横領の罪で禁錮刑(現在は執行猶予中)を言い渡されたアレクセイ・ナワリヌイ氏は、自らのブログであきれてみせた。

 フランス通信(AFP)や米紙ニューヨーク・タイムズといった欧米メディアも、その狙いについて「ネットなどでのプーチン政権への批判封殺」や「政権のイメージアップのための情報操作」などと、批判的に伝えている。

 ロシアの日刊紙の編集長でモスクワ記者組合のパベル・グセフ会長は、米紙ロサンゼルス・タイムズ(電子版)の取材に「新たな巨大プロパガンダ組織の設立だ」と憤った。

 内部からも反発

 ナチスドイツによるソ連侵攻の2日後に設立された歴史を誇り、記者ら2300人の従業員を擁する再編対象となったノーボスチの社内にも衝撃と反発が広がっている。

 「厳しい規制下にあるメディア部門の国家管理を厳格化するのが狙いだ」

 反プーチンののろしが、その足元から立ち上り始めた。(SANKEI EXPRESS

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