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「女性のタイムリミット」 生き物の根源考える難しい問題
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母親を早く亡くしたチンパンジーは短命であり、母親の存在が個体の生存に大きな影響を及ぼすことを前回、書きました。同時に、女性が子供を持つことは大変なことです。「卵子凍結容認を決定 健康な未婚女性も 生殖医学会が指針」(MSN産経ニュース11月15日)という報道では、日本生殖医学会が未婚女性が卵子を凍結保存して将来の子作りに備えるガイドラインを作ったことに触れています。
高校や大学で、前の方の席で先生の話を理解して黒板をきちんとノートにきれいに清書していたのは男子より女子が多かったのではないでしょうか。優秀な女性たちは、どんどん洗練されていきます。
この頭脳に加え、ある人は美的センスを身につけ、ある人は粘り強い労働力を武器に社会で活躍し、世の中を豊かにしています。仕事が面白くって仕方がなくなる頃に、結婚、出産の時期が重なります。
女性の20代の1年はその後の年の3年に匹敵するとおっしゃっていた女性患者さんもいらっしゃいました。その世代の女性は大忙しです。
やっとお気に入りのパートナーが見つかったときには、年を取り過ぎてしまっているかもしれません。自分の若いときの卵子を保存しておきたいというのは、生物学的欲求から考えても至極当然のことと感じます。
また、学会としては卵子の凍結保存は、あくまで救済措置であり、25~35歳で自然妊娠するのが原則と表明しています。医療技術の進歩が、タイミングをずらして妊娠できる可能性を作りました。女性の選択の余地を増やしたことは喜ばしいことです。
私は、大学でさまざまな細胞を培養していました。特定の細胞を選別して特殊な液体の中で、液体窒素を使って決められた速度で冷却していったん凍結。その後、必要な時に解凍して実験に使っていました。
凍結方法や保存方法が悪いと、細胞の増殖が悪く最悪の時には全滅してしまうこともありました。卵子の凍結にも同じことが危惧されています。
凍結解凍方法だけでなく、施設がきちんと存続するかどうか、卵子の取り違えはないのかなど。女性のタイムリミットを延ばすというのは、生き物の根源を考える難しい問題です。(秋葉原駅クリニック院長 大和田潔/SANKEI EXPRESS)