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オランダ 水に浮く一戸建て住宅

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オランダ 水に浮く一戸建て住宅

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 オランダの首都アムステルダムに、船のように水に浮く一戸建て住宅が並ぶ一角がある。干拓で国土を広げてきたオランダ人が、土地不足解消を図る開発計画に盛り込んだ新たなアイデアだ。開発計画は欧州債務危機による景気悪化で停滞しているが、将来的には地球温暖化による水面上昇に影響を受けにくいのも利点という。

 土地不足の解消

 水面に張り出した突堤の両側に並ぶ水上住宅。どの家にもボートが横付けされている。青、茶色、打ちっ放しのコンクリートなど多様なデザインはどれもおしゃれで現代的だ。

 アムステルダム市は、海に堤防を造ってできたアイ湖に人工島を8つ造成し、土地不足の解消を図る「アイブルフ計画」を1990年代後半に立案。うち一つの人工島に93戸の水上住宅が2009~12年に完成した。住宅が浮かぶのは島内の人工池で、池はアイ湖と水門で区切られている。

 市の担当者は「地盤が緩く、土地の造成にコストと時間がかかると予想された」と説明。温暖化による水面上昇に対応する実験の側面もあると強調する。

 「水に囲まれ、住民はこれまでと違う暮らしを営む。新たな環境を創造する面白い仕事だった」。建築家のヨス・ロードボルさん(54)にとって、水上住宅の設計は初めての経験だった。

 水上住宅は造船所で建設し、完成後、船で曳航(えいこう)する。構造自体は通常の家とほぼ同じだが、鉄の骨組みで強度を高めた。水害の多いバングラデシュの建設会社も関心を持ち、問い合わせがあったという。

 アイブルフ計画は、08年の金融危機と近年の欧州債務危機による景気悪化の影響をもろに受けた。人工島は15年までに4つ目が完成するが、残る島の建設は停止。水上住宅を増やすため突堤を追加する計画もあるが、工事の見通しは立っていない。

 入居はくじ引き

 水上住宅は大人気で、入居はくじ引きだった。もともとオランダでは運河に浮かべたハウスボートに住む人も多く、水上生活への親近感が強い。日本のように台風の心配はない。

 ロードボルさんに設計を依頼したソーシャルワーカーのアールト・クマンさん(43)は、母親がハウスボート暮らし。「僕も水が好きだし、首都で自宅を建てる土地を見つけるのは本当に難しい」と入居の動機を語る。

 パートナーのシモーネさんは初の水上生活。バランスを保つため家具の配置に気をつける必要があるが「家の周りで夏には水泳、冬にはスケートができる。自然とともに暮らしている感じが好き」と満足そうだった。(アムステルダム 共同/SANKEI EXPRESS

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